二〇一八年西日本豪雨で失われた横溝正史の書籍をご寄贈ください

 一九四五年(昭和二〇年)四月から三年余り岡山県吉備郡岡田村、現在の倉敷市真備町岡田に疎開した横溝正史は終戦後、この地で探偵小説の執筆に没頭しました。ここで書き上げた『本陣殺人事件』をはじめ『蝶々殺人事件』や『獄門島』など数多くの名作が執筆されました。まさに真備町は名探偵金田一耕助の生まれ故郷と言っても過言ではないでしょう。(もちろん金田一耕助は東北の出身という設定ですが)
 その真備町を二〇一八年(平成三〇年)七月、西日本豪雨が襲いました。真備町の三割が水没し、鉄筋コンクリート造二階建の真備図書館は一階床から三・五mの高さまで浸水し、泥水は二階フロアにまで達しました。一階の開架・閉架エリアに置かれた本は全て水没し、横溝正史文庫(貴重な資料等八五〇点の書籍)や郷土資料を含む十二万七千冊のほとんどが廃棄処分となりました。真備図書館は関係者のご努力で本年一月三〇日に再開されたばかりですが、横溝正史の単行本や貴重な資料の入手がはかどらず苦慮されているようです。
 ところで江戸川乱歩生誕地の名張市立図書館にも乱歩コーナーがあり、貴重な乱歩関連図書が収蔵されています。たとえば、正史から乱歩に贈られた『真珠郎』(六人舎、昭和十二年初版)の献呈署名本です。乱歩はこの本の序文で「この小説には、作者の従来の名作『鬼火』『蔵の中』古くは『面影双紙』などには全く見られなかった一つの重大な魅力が付加わって、その完璧さに於いて、横溝探偵小説の一つの頂点を為すものかも知れない」との賛辞を寄せています。日本探偵小説界の両雄、ライバルにして盟友の交流を象徴する一冊であり、本書をご寄贈いただいた慶應義塾大学推理小説同好会OB会様の名張市へのご厚意とご期待を象徴する一冊でもあります。
 横溝正史文庫にしても江戸川乱歩コーナーにしても、その書籍は単なる稀覯本ではなく、作者や関係者の想いを封じ込めた日本ミステリー史の貴重な物証です。それが一瞬にして失われた衝撃と無念はいかばかりでしょう。とても他人事とは思えません。及ばずながら私も横溝本を真備図書館へお送りしました。名張市立図書館も検討中とのことです。
 そこで会員の皆さまにお願いです。お手元の横溝正史の書籍を真備図書館にご寄贈いただきたいと思います。金田一耕助誕生のまちへ、皆さまの想いをお届けくださいますよう、乱歩生誕のまち・名張在住の一会員からお願い申し上げます。

書籍の送付先、問い合せ先
岡山県倉敷市立真備図書館
(担当 矢吹)
〒710-1301
岡山県倉敷市
真備町箭田四七-一
電 話 086-698-9393
FAX 086-698-8300

寄贈をお願いする書籍
1 横溝正史の著作(小説、随筆等)全般
2 横溝正史ならびにその著作に関する評論、作品論等
3 江戸川乱歩をはじめとする同時代の作家による探偵小説
4 ミステリー小説全般
※ 以上に加え、会員の皆さまの御作をご寄贈願えればうれしいとのことです。その際ご署名をいただければ、さらにうれしいとのこと。
 いずれも原則として単行本の寄贈をお願いします。(文庫は結構揃ってきているらしいです)
 おそれいりますが、送付にかかる費用はご負担願います。
(文責・秋永 正人)

参考
●図書館の被害状況(日本図書館協会HP)
http://www.jla.or.jp/committees/tabid/757/Default.aspx