イベント報告

西上心太

 十月十八日(水)千代田区内幸町のイイノホールにて、日本推理作家協会設立70周年記念イベント「嗜好と文化2017~わたしのポリシー~」が開催された。
 これは毎年行われているJT・毎日新聞共催による「嗜好と文化」を拡大した企画である。
 大ホールでのトークショーに先立ち、午後五時よりカンファレンスルームで逢坂剛独演会と書評家座談会が始まった。
 逢坂氏は大の趣味であるガンプレーとフラメンコギター演奏で場内を沸かせ、西上心太、山前譲、吉田伸子の三氏による座談会へと場を繋いだ。逢坂氏もその場に残り、四人による対談となった。書評家になった経緯、文庫解説への取り組み、新人賞予選選考の裏話、作家と評論家の作品評価の違いなど、話題は多岐にわたった。時には大きな笑いに包まれ、立ち見を含めた百人に及ぶ聴衆は存分にトークを楽しんだ。
 ワークショップは午後五時五十分に終了し、午後六時より大ホールにて、トークショーの幕が開いた。フリーアナウンサー海賀美代子氏による開会挨拶の後に、今野敏代表理事による主催者挨拶が行われた。戦後に江戸川乱歩が呼びかけて始まった土曜会が探偵作家クラブへと発展し、後に社団法人化を契機に日本推理作家協会に改称したという、会の沿革を紹介するとともに、今後の抱負を語った。
 それに引き続き、第一部「日本推理作家協会賞 受賞者紹介トーク」が始まった。
 海賀氏の紹介で「愚者の毒」で第七十回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞した宇佐美まこと氏、同部門選考委員のあさのあつこ氏、「黄昏」で同短編部門を受賞した薬丸岳氏、同部門選考委員の道尾秀介氏の四氏が一人ずつ登場した。
 海賀氏が進行役となり、受賞の連絡を受けた際にいた場所や様子、受賞作のテーマを決定するまでの過程、執筆の際の苦労、自作に対する思いなどが二人の受賞者から語られた。続いて二人の選考委員から、選考会の様子や、宇佐美、藥丸両氏の作品が受賞と決まった理由と経緯が語られた。最後に二人の受賞者から、今後の目標と描きたい題材についての展望が語られ、約五十分間のトークが終了した。
 十五分の休憩をはさみ、午後七時五分から第二部トークセッション「俺のポリシー」が始まった。出演者は阿刀田高、北方謙三、逢坂剛、大沢在昌、東野圭吾、今野敏という歴代の理事長(現在は代表理事)経験者六名。
 海賀氏の紹介により、九代目理事長の阿刀田高氏より順次登場し、大沢在昌氏の司会進行によりトークショーが始まった。
 出演者はそれぞれ、理事長になった経緯、就任時の意気込み、代表者としての苦労をはじめ、裏話などを、存分に語った。
 その後は若手作家へのメッセージや、観客からの質問への回答などを話題に、時にはシリアスに、時には笑いを交え、大沢在昌氏の軽妙な司会もあいまって、およそ二時間に及ぶトークショーは熱気に包まれたまま、好評のうちに終了した。
 約五百人が収容できるホールはほぼ満席で、例年以上の盛り上がりを見せたことは記念事業としてなによりのことだった。
 なおロビーでは、五十周年文士劇「ぼくらの愛した二十面相」と、六十周年の時に製作した映画「消えた理事長」のビデオが放映されたのをはじめ、文士劇の台本集、各周年事業の際の記念品などの展示も用意され、多くの観客が見入っていた。
 会員を含む観客と、記念事業の運営にあたった関係者各位には改めて謝意を表したい。