日本推理作家協会の活動
六三年五月十五日、社団法人日本推理作家協会の第一回臨時総会と設立祝賀会が開かれている。それまで宝石社の一室に間借りしていた事務所も、六月一日をもって、講談社第一別館十一号室に移転することになった。講談社の厚意により、好条件で借りることができたためである。
六五年からは、会報とは別に、新たに機関誌として「推理小説研究」が発刊された。第四号までは、創作も載っていたものの、基本的にはタイトルどおり、評論、研究、エッセイが主体の研究誌である。
創刊号(六五年十一月) 「特集 江戸川乱歩追悼」
第二号(六六年七月) 「特集 推理小説の周辺」
第三号(六六年十二月) 「座談会・推理小説の文学性、他」
第四号(六七年八月) 「特集 海外ミステリ展望」
第五号(六八年七月) 「特集 ジャンル討論会」
第六号(六九年一月) 「特集 推理小説の魅力」
第七号(六九年十二月) 「特集 技法の研究」
第八号(七〇年八月) 「特集 推理小説昨日・今日・明日」
第九号(七一年五月) 「特集 復刊ブームの周辺」
第十号(七二年九月) 「特集 推理小説の楽屋」
第十一号(七三年十二月) 「特集 推理小説と文学賞」
第十二号(七五年五月) 「戦後推理小説総目録」
第十三号(七七年十二月) 「戦後推理小説総目録(第二集)」
第十四号(七八年五月) 「公開・わたしの創作ノート、他」
第十五号(八〇年六月) 「日本推理作家協会三十年史」
第十六号(八〇年十二月) 「戦後推理小説総目録(第三集)」
第十七号(八三年九月) 「特集 作家の作家論、他」
第十八号(八三年十二月) 「戦後推理小説総目録(第四集)」
第十九号(八六年十二月) 「戦後推理小説総目録(第五集)」
第二十号(八七年十二月) 「日本推理作家協会四十年史」
第二十一号(九二年六月) 「戦後推理小説著者別著書目録(第一集)」
特に、中島河太郎の編になる総目録の号と山前譲の編になる著書目録の号は、推理小説研究者にとって、第一級の資料となっている。なお、号によっては在庫がある場合があるので、興味をお持ちの向きは、直接協会まで問い合わせてみていただきたい。
推理小説年鑑の編纂も継承して行われているが、それとは別に、光文社からもアンソロジー出版の申し入れがあり、六九年にはカッパ・ノベルスから〈現代ミステリー傑作選〉全三巻が刊行された。以後、カッパ・ノベルス版のアンソロジーは、三年に一回、全三冊のペースで刊行され、七一年の〈最新ミステリー選集〉、七四年の〈ベスト・ミステリー〉、七七年の〈最新ベストミステリー〉、八〇年の〈現代ベストミステリー〉、八四年の〈現代ミステリー傑作選〉、八六年の〈最新傑作ミステリー〉、八九年の〈ミステリー・ベストセレクション〉、九二年の〈日本ベストミステリー「珠玉集」〉、九五年の〈「傑作推理」(ベスト・オブ・ベスト)大全集〉、九七年の〈探偵くらぶ〉とつづいている。このうち、〈探偵くらぶ〉のみ、四六年から五八年に発表された作品を対象にしたクラシックアンソロジーだが、その他は過去三年間の作品から選んだ最新アンソロジーである。 七四年からは、過去の年鑑が講談社文庫に収録されるようになり、これらがいずれも好調な売れ行きを示したため、編纂印税によって協会の財政は一気に潤った。探偵作家クラブ時代には、会費の他に確たる財源を持たず、もっぱら有力会員からの寄付によって賄われていた運営費が、定期的に確保できる見通しがたったのである。
七五年十一月十五日には、講談社の別館から事務所を独立させ、現在の南青山、秀和青南レジデンス三〇五号室に移転している。