新年のご挨拶
代表理事 今野敏
あけましておめでとうございます。
十二月三十一日から、一月一日へ。たった一日、いつもと同じく二十四時間経っただけなのに、まったく違った気分になるのは、毎年のことながら不思議なものです。
暦のない時代でも、季節の移ろいはわかるし、星々の運行などを観察して一年のサイクルのようなものは把握していたでしょう。それでも、年末年始のけじめのようなものはなかったのではないでしょうか。
たった一日なのに、何もかもが新しくなる。年を越せば、人は新しくなれる。新年というのは偉大な発明かもしれません。
今年はわが協会が七十周年を迎えます。
戦後間もない昭和二十二年に、「探偵作家クラブ」として発足した協会は、今や推理小説のみならず、エンターテインメントをリードする役割を担うまでになりました。
かつて探偵小説などはサブカルチャーと見なされていました。それが今では文芸の中核を成すまでに普及・発展したのです。
協会七十年の歴史は、そのままミステリーの先達たちの開拓の歴史だったと言えるでしょう。
発展の後には成熟があります。そして、成熟は衰退の危機を孕んでいるものです。ミステリーは衰退するのでしょうか。私はそうは思っていません。一ジャンルなら衰退もあり得たでしょう。しかし、すでにミステリーは多くのジャンルを内包する文芸そのものに進化しているからです。
もちろん、多くの不安要素はあります。必要なのは、その不安要素に打ち勝つ『熱』だと思います。
『熱』のないものは廃れていきます。わが協会は、その『熱』を発する原動力になるべきだと、私は考えています。
七十周年を迎え、協会がまた新たな足跡を残す一年でありたいと思います。
みなさんのご活躍をお祈り申し上げます。