新年のご挨拶

代表理事 今野敏

 明けましておめでとうございます。
 昨年無事に協会七十周年を迎えることができ安堵しております。今年はさらに推協の歴史に新たな一歩を踏み出す年になると思います。
 新年というのは、いいシステムだと言った人がいます。特に日本人の新年の行事は実によくできていると思います。
 根底に神道の禊の思想があるのでしょうか。よくも悪くも、旧年のことは忘れ、新たな年をすがすがしい気分で迎えようとするのです。
 一年ごとにすべてをリセットする。そんな感覚があります。昨年、あまりいい年でなかった人も、今年こそは何かいいことがあるかもしれません。
 昨年は推理小説を巡る状況について、いろいろと言われた年でもありました。江戸川乱歩賞を始め、いくつかのミステリの新人賞で「受賞作なし」となったことが原因だったのではないかと思います。
 中には、ミステリ危機説などを囁く声もありました。
 私は新聞のインタビュー等で、まったく心配していないと、繰り返し述べてきました。それは実感です。たまたま新人の作品に恵まれなかっただけで、それが何かの傾向を物語っているとは思えません。
 ただ、新人賞に応募する人たちがノウハウ化している傾向は否めないかもしれません。かつて応募者は孤独でした。ネットの発達や小説講座などの増加で、誰かに相談しつつ、あるいはアドバイスをもらいつつ応募原稿を仕上げる、という傾向があるように思います。
 多少のノウハウはたしかに必要かもしれません。しかし、我々が求めているのは、小細工を凌駕する圧倒的な個性なのです。そうした才能が簡単に出現するはずはないのです。
 二〇一八年が、ミステリにとって実り多い年であるとともに、会員の皆様にとってよりよい年であることを、心から祈っております。