懇親会開催
一般社団法人日本推理作家協会の懇親会が、七月二十三日(火)午後六時より、飯田橋のホテルメトロポリタンエドモンドにて開催された。
道尾秀介事業担当常任理事の司会のもと、挨拶に立った京極夏彦代表理事は「何の因果か前世の宿業か、代表理事になり景気の悪い顔を皆様の前に晒すことになってしまいました。まずはその点についてお詫び申し上げます。私の陰気な容貌に合った世相です。世相は荒び見通しは暗く景気は悪い。しかし出版の歴史を長いスパンで鑑みてみたところ、そういう時にこそこの業界は活性化してきた。反骨、諧謔、諷刺、さらに普遍的な物語の創造というものは景気などに影響されずにあるわけで、さらに言うならばこの業界は常に時代の最先端のメディアを利用し、最先端の流通経路を使って発展してきた。その点を失念してはいけない。今こそが私たちのチャンスの時でもある。いまここにいる方々はこの業界を背負って立つ最高の出版社、編集者、作家の皆さんです。そうした方々がこの懇親会を機会にして新しい仕事、新しい出版業界が発展をするきっかけにする可能性もある。どうかこの陰気な代表理事の姿を目前から消して、陽気に明るく楽しく過ごせていただければと思います」と挨拶。続いて逢坂剛氏の発声により乾杯し、歓談の時間となった。
午後七時過ぎから、大沢在昌氏の司会により、ビンゴに代わる新企画である会員新刊紹介が始まり、辻真先、川奈まり子、鈴木輝一郎、水生大海の四氏が登壇し、自著PRのスピーチを行った。
光文社刊行『焼跡の二十面相』を紹介する辻氏。「戦前の「少年倶楽部」誌上でリアルタイムに二十面相を知った子供として、昭和十四年から昭和二十三年にかけての彼の欠場が心寂しく、あの敗戦の混乱日本でもアイデンティティを見失わなかった希有なキャラとして、小林少年と共に活躍させたかったという、往年の子供の遊び心の一冊です」
晶文社刊行『少年奇譚』・『少女奇譚』を紹介する川奈氏。「今回二冊同時に刊行する実話怪談集『少年奇譚』『少女奇譚』では、万人の共通体験である子ども時代に焦点を合わせて、十代から七十代の男女計五十名以上をインタビュー。徹底した取材に基づき、各人が子どもだったそのとき・その場のディティールと気持ちを描きました。
すべて実話でありながら、情緒的な体験談にとどまらず、一話ごとに時代背景や郷土史、土着信仰などを紐解き、奥行きを持たせて構成しています。
怪異と隣り合わせだった幼い日々を思い出し、郷愁にひたりながら、怖がっていただければ幸いです。
怪談愛好者のみならず、歴史や民俗学などを好む方、そしてかつて子どもだった皆さんの心に届くことを願っています」
河出書房新社刊行『何がなんでもミステリ作家になりたい!』を紹介する鈴木氏。「告知です。鈴木輝一郎小説講座で新刊電話インタビューに出演しませんか?「出演してもいいよ」という作家本人、または「担当作家のこの本を売りたい」という編集者のかたは、鈴木輝一郎のTwitterのコメント、Facebookのメッセンジャー、メールアドレスのどれかでお気軽にご連絡ください」
双葉社刊行『最後のページをめくるまで』を紹介する水生氏。「七月十九日に、双葉社さんから『最後のページをめくるまで』という短編集を出しました。連作ではなく、売りづらいと言われる独立の短編集です。みなさーん、双葉社さんは太っ腹ですよー。
内容はタイトルまんま「なるほど、こう物語が閉じるのか」というどんでん返しのストーリー5作の詰め合わせ。最初の話、「使い勝手のいい女」は昨年の『ザ・ベストミステリーズ2018』にも収録いただいています。
本のタイトルを決めるのに難航し、ハードル高く挑戦的なタイトルに。いっそのことと開き直って逆手に取り、再校ゲラで調整して、最後、ページをめくったあとの右側で話が終わるという、体裁も整った本になりました。
短編小説の面白さを求めて描いた物語です。是非お手に取ってください」
その後は再び歓談の時を過ごし、午後八時の散会まで賑やかなひとときを過ごした。
なお今年古希を迎えた、伊藤昭、薄井ゆうじ、笠井潔、加治将一、川田弥一郎、川又千秋、公手成幸、黒川博行、秦新二、聖龍人、穂井田直美、松坂健、山田順子の各氏に記念品をお送りした。