通算五期目の名人に
年一回開催される推理作家囲碁同好会の大会は、今年は三月十七日に行なわれた。数えて十二回目。場所は市ヶ谷の日本棋院本館。佐賀に転居した僕は、毎回そのために上京。
参加者は十名。普段は上位グループがトーナメントによる名人戦、下位グループが総当たりによる双葉名人戦を行なうのだが、今回は一本化して全員が名人を目指す。置碁制なので、誰でも名人になれる可能性があるのはいつもの通り。
待ち時間が少なくなるように新井素子さんが工夫して作成したトーナメント方式に従い、籤引きで、僕の初戦は郷原宏七段と、向こう先。郷原さんはもう四十年近く前、『週刊ポスト』主催の文壇囲碁名人戦で初めてお会いした頃から本当に碁に熱心で、以来着々と腕をあげ、今は詩人囲碁会の世話人もされているのは頭がさがる。だが、正直言って向こう先ではなかなか負けるわけにはいかない。実戦は中盤の入りはな、黒が重い石を作ってくれたので、白が打ちやすい流れになった。結果は十目勝で、まず一勝。
二回戦は新井素子二級と、向こう九子。二級はうちの会での判定だが、新井さんはどうもそのあたりでずっとのび悩んでいるご様子。機会があれば集中特訓でもしてさしあげて、ここらで大きく殻を破ってもらいたいと思っているのだが、何しろ東京と佐賀ではなかなかそのタイミングがない。実戦は孤立したとはいえなかなか死にそうもない黒石があっさり死んでしまい、その後もあちこちで白が大得をして、結局フルボッコの中押し勝となった。
さて、次が決勝戦で、西上心太初段と、向こう七子。西上君は将棋のほうではかなりの強豪で、そちらで培った勘や読みの要領は囲碁にも応用が効くので、なかなか大きく崩れない強さがある。まあ無理なことはすまいとボチボチ打ち進めていくうちに、果たしてかなり細かい碁に。どうやらヨセで少々得をしたらしく、作って四目勝だった。
これで優勝。十三期推協名人に。今回の賞品はすべてお菓子類で、目玉は七千円の金平糖だったのだが、僕は四千円のチョコレートを頂戴することにした。
はてさて、これで僕は五回目の優勝なのだが、自分が代表を務める大会でそんなに勝つのはいかがなものかという気がさすがに自分でもするので、次回から大会参加は辞退しようか、そうでなければ最高段位は八段で打ち止めというローカルルールをやめて、自分を九段格にするべきか、などと考えている。今度定例会にあわせて上京できれば、会員の皆さんと相談してみなきゃ。