山野辺 進 展~19世紀末から…~開催

山野辺進

 十九世紀末から二十世紀初頭、アール・ヌーボーの寵児、エミール・ガレ、ドーム兄弟のガラス工芸に魅入られ描きはじめました。
 ガレの流れで古写真から着想をえて、華やかなパリの風景、活気あふれるロンドン、ニューヨーク・タイムズ・スクエアの雑踏。
 そして同時代のネイティブ・アメリカン、明治維新の日本と筆は止まらず今回の展示となりました。和紙に墨と顔彩で描いています。
 お楽しみいただければ幸いです。

会期
四月十四日(火)~二〇日(月)
午前十一時~午後六時まで
(最終日は午後四時まで)
場所 田中八重洲画廊
〒一〇三―〇〇二八
東京都中央区八重洲
一―五―一五 田中八重洲ビル一階
電話 〇三―三二七一―七〇二六
(会場直通)
http://garou.tanakatochikanri.com/

 詳しく申し上げますと……
 十九世紀末から、二十世紀初頭に開催されたパリ万博に、日本の美術工芸品が多数出展された。西洋美術の造形運動、アール・ヌーボーに多大な影響をおよぼすジャポニズムの所以でもある。アール・ヌーボーの先駆者の一人、エミール・ガレは、産業革命が進む工業化の時代、ガラス工芸を芸術の域に高めた。植物や昆虫をモチーフとした日本の浮世絵、工芸品からヒントを得て、数々の傑作を生み出した。ガレのダイナミックな構成の作品、ドーム兄弟の繊細さ、と魅力はつきない。
 ガレ、ドーム兄弟の作品から、昆虫を解き放って描いてみた。
 浮世絵、工芸品はゴッホ、ゴーギャン、ロートレック、ロダンと、時の芸術家をジャポニズムの虜にする。産業革命によって、近代社会の始まりとなるこの時代はベル・エポック(良き時代)ともよばれ鋼鉄の武器の大量生産が可能となり、覇権争いも烈しくなった。格差社会、漠然とした不安感が刹那的な快楽を求める華やかなパリを生んだ。
 上流紳士、娼婦、与太者とピンからキリまで階級混同のモンマルトル界隈の賑わい。赤い風車、キャバレー、ムーラン・ルージュ。ロートレックの絵を通して感ずるムーラン・ルージュの狂気。一葉の古写真から想像する映像が、跡切れるることはない。
 ベル・エポックの延長線上に、第一次世界大戦があった。
 ロンドン、パリからニュー・ヨークの、現在のタイムズ・スクエアとよばれるY字路の雑踏風景を描き、十九世紀アメリカ西部へ。西部劇映画でインディアン討伐シーンに拍手して育った私は、後年、ディー・ブラウン作の『わが魂を聖地に埋めよ』を読み。ネイティブ・アメリカンの実態にふれる。贖罪としてネイティブ・アメリカンを描く。
 日本は幕末から明治へ。西洋文明に目覚め、ヨーロッパの模倣がはじまる。西洋美術の流れを変えた、世界に誇れる浮世絵に変わるもの無し。産業革命の波が日本にも忍びより、近代的な武器を手にすることとなる。ネイティブ・アメリカンの流れで、アイヌを描き、維新の五稜郭の戦いで終わる。
 遠くない先に日露戦争があった。

(山野辺進展は中止となりました)