追悼 藤田宜永氏
追悼文を書くのは辛い。亡くなった人を思い出すのが辛いのだ。親しかった人ならなおさらだ。
今さら思い出を語って何になるだろう。
山ほど思い出はある。酒場でずっと語りつづける姿とか、いつまでも作家として鳴かず飛ばずだった私をことさらに気づかってくれたことだとか、個人的な思いもある。
故人を悼むと言うが、悼む気などさらさらない。
もちろん、藤田さんの死は悲しいし、悔しい。
だが、作家の死というのは、そういうものではないだろうという気持ちが強い。
多くの作品が残され、それはいつでも手に取ることができる。作品を読めば、いつでもそこにいる。それが作家という存在だ。
作家の人生は戦いだ。常に物語を生み出すための戦いを続けているのだ。藤田さんはその苦しい戦いを終えた。
心から、お疲れ様でしたと言いたい。