江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞贈呈式開催
第六十七回江戸川乱歩賞・第七十四回日本推理作家協会賞贈呈式が、十一月一日(月)午後四時三十分より豊島区立芸術文化劇場にて開催された。豊島区の協力により、一般応募観客も含むおよそ六〇〇名が参加した、公開贈呈式となった。またYouTubeによるライブ配信も実施された。
両賞の沿革を紹介したビデオ放映後に贈呈式の幕が開いた。フリーアナウンサー笠井信輔氏による司会進行の元、挨拶に立った京極夏彦代表理事は「新型コロナウイルスは終息気味だが、まだ油断がならない状況だ。その中で素晴らしい作品を選出できた。平時であれば記者会見があり関係者を集めての授賞式、パーティというのが先例だが、この状況ではできない。昨年はリモートによるクローズドで行った。今年は開催方法について議論を重ねてきたが、当協会の創始者である乱歩とゆかりのある豊島区とパートナーシップを結び、多大なる尽力をいただき、初めてとなる合同公開贈呈式を開催する運びとなった。一人でも多くこの賞を知ってもらいたい、祝ってもらいたい、叶いますならば一人でも多くの方に受賞作を手に取ってもらいたい。小説は読者のもとに届いて初めて完成する。皆さまぜひご一読を」と挨拶。
続いて第六十七回江戸川乱歩賞の贈呈式の部に移った。
最初にビデオによる受賞作の紹介があり、豊島区長高野之夫氏、後援の株式会社講談社代表取締役社長野間省伸氏、同じく株式会社フジテレビジョン代表取締役社長金光修氏より祝辞が続いた。
賞の贈呈に移り、京極夏彦代表理事から受賞者の伏尾美紀氏と桃野雑派氏に、それぞれ正賞の江戸川乱歩像と副賞の賞金五百万円が贈られた。
選考委員を代表して貫井徳郎氏が「ダブル受賞には妥協した場合と、甲乙付け難い場合の二つのパターンがある。今回は後者であった。桃野作品は最初の三段階評価の投票で、選考委員五人のうち三人がA評価をつけた。武侠小説の態を取った本格ミステリーで、キャラクターが面白く、一人一人が立っていた。館の中だけの話なので力のない人だと退屈するが、そんなことはない。特殊設定ミステリーであり、応募原稿の段階ではやや事前の説明が不足していたが、それを書き足した書籍はより良くなっている。一方の伏尾作品にAをつけたのは私だけだった。本来勝負にならないはずである。多視点の警察小説なのだが、視点人物がころころ変わり、三分の一くらいまで誰が主人公なのかもわからなかった。しかも主人公が女性であることもわからず、ずっと男性だと思って読んでいた。作者は女性と承知して書いているのだがそれが読み手に伝わらないのだ。このように小説のテクニックは下手なのだが、面白かった。脚を縛って走っているのに一番速かった。小説の書き方は書いているうちにうまくなる。センスやトリック、キャラクターの造形など、後から鍛えられないところがうまい。加筆改稿すれば良くなる。その結果ダブル受賞になった。乱歩賞史上でもハイレベルな二作だった」と選評を述べた。
受賞者挨拶に立った伏尾氏は「長年ミステリー作家になりたいと思っていたが、最初の作品もできないままこの年になってしまった。今回思いきって書き上げた。もう十年早くデビューできていればと正直思っているが、受賞作に関していえば、この時でなければ書けないものだった。選評のお言葉にあったが、まだまだ小説は未熟で、もっと精進しなければならないが、それは伸びしろだと思いポジティブに捉えて。たくさんの作品を世に出し、受賞者の名に恥じない作家になっていきたい」
桃野氏は「連絡を受けてえらいことになったというのが最初の感想だ。二年連続最終に残ったが、今年は受賞することができて感謝します。作家になると決めたのは五年前で、公私にいろいろあって落ち込んでいたが、甥っ子が生まれることを知り、彼に恥ずかしくない人間になろうと思い、この賞に応募した。一人で受賞したわけではなく、鈴木輝一郎氏の小説講座を受講し、そこでの教えが大変参考になった。そう言えといわれたわけではないが、そこでの教えに従っていまここに立っている。いろいろな人に受けた感謝を忘れないようにしたい」と、それぞれ喜びと抱負を語った。
続いて日本推理作家協会賞の贈呈式に移行し、京極夏彦代表理事から、長編および連作短編部門受賞者の坂上泉氏、リモート出席の櫻田智也氏の代理で東京創元社泉元彩希氏、短編部門の結城真一郎氏、評論・研究部門の真田啓介氏に、それぞれ正賞の腕時計と副賞の五十万円が贈られた。
長編および連作短編部門の選考委員を代表して柚月裕子氏は「乱歩賞はデビューしていない方の中から綺羅星を捜す賞でそれも大変だが、こちらはすでにデビューをされ、人気実績ともに博している方のノミネート作品の中から選ばなくてはならない。初めて選考委員を務めるが、自分が発した言葉が全て自分に返ってくる。そのような厳しさを経験しながらの選考会になった。受賞作の二作は満場一致で決まった。坂上作品はいちばんうなった作品だった。著者の膨大な知識量は凄いと思った。主人公たちがどのように人間として動き、どのような感情を持つかが大切だ。その知識と主人公たちの魅力がバランスよく描かれていた。バディものだが、二人が違和感なくそれぞれ信念を持って行動していく様が、読者のページをめくる手を止めさせず、作者が持っている知識も遺憾なく注ぎ込まれている。この作品を読めて良かったと思った。桜田作品はいちばん賞にふさわしい作品と思った。主人公の魞沢が一作を追うごとに魅力的になり、豊かな人間性を持つキャラクターとして描かれていた。本格ミステリーという大きな謎解きだけでは終わらず、そこに描かれている人間ドラマがトリックとリンクして、一つに融合されていたのは素晴らしいと思った。連作短編集というものの面白さ、贅沢さを感じられた作品だった」と選評を述べた。
短編賞と評論・研究部門は、欠席の垣根涼介選考委員に代わり、司会者が選評を代読した。
「短編部門の受賞作は初回の投票で最高得点になった。二転三転するプロット、回収の見事さなど構成に秀でており受賞は当然。次点は「ピクニック」で、最後までほぼ違和感なく読めたのはこの二作だった。視点に若干の無理が感じられなければ、同時受賞もあったかもしれない。評論・研究部門は選考委員の評価が各作品に分散した。「松本清張が『砂の器』を書くまで」はとても読みやすく面白い。ただミステリー評論ではなく、新聞小説論であるという意見には頷かざるを得なかった。「数学者と哲学者の密室」は各論の彫り込みはそれなりに納得がいくが、評論としては書き手の立位置にバイアスがあった。受賞作は作者のこれまでの評論の集大成である。作品として統一感の欠如はあるが、古典探偵小説に対しての一貫した美意識と熱意が評価され受賞の運びとなった」
続いて受賞者挨拶があった。坂上泉氏は「私がこの作品で書いた昭和二十九年の大阪は、敗戦を迎えてから九年、がらりと世の中や社会の風景が変わった時代である。そういう時代に興味があるのは、変化があっても変わらないものもあるからだ。戦中戦前から、そういう二つの顔が色濃く見える時代。そういう中で僕らが見えていないもの、なかったこと、見えなかったことにしているものが色濃く残っていた。そういうものを忘れないでいたいという思いを込めて書いた。歴史小説のつもりで書いたが、はからずも推理小説として評価をいただき望外の喜びである」。
リモート出席の櫻田智也氏は「私の両親は義理堅い人たちだが、私は若い頃から不義理ばかり重ねてきた。学校を卒業するとき、家を出るとき、会社を辞めるとき、いつも逃げるようにして次の居場所を捜してきた。にもかかわらず一作目の本を出したとき、古い友人からたくさんの祝福が届いた。もはやまったく違う人間のように思っていた過去の自分と、今の自分が確かにつながっていると、当たり前のことに驚いた。その経験が今回賞をいただいた二作目を書かせたように思う。故郷の北海道や学生時代の記憶、かつて暮らした東北地方の思いなど、各作品に自分のルーツをちりばめ、その中に今の自分が感じる不条理や後悔のようなものを添えて書き上げたのが本書だ。そんな作品がミステリーの過去と現在、そして未来をつなぐであろう協会賞の一つのパーツになれたことが嬉しい」
短編賞受賞の結城真一郎氏は「三年前に新潮ミステリー大賞を受賞してデビューが決まったとき、友人から受賞おめでとう、どうせだったら直木賞に応募すれば良かったのに、というお祝いメールが来た。今回は、なんかよくわからないがすごい賞だねというメールに続き、調べてみたら歴代受賞者知ってる人ばかりじゃないか、この賞やべえぞというメッセージが届いた。その言葉を見て初めて実感した。直木賞が公募の賞だと思っている友人から見ても、ひと目見て凄いとわかる偉大な先輩たちが通ってきた道なんだなと。であるならば自分がその看板を汚すようなことがあってはならないし、願わくば五年後、十年後、二十年後には、彼らが言うやべえ歴代の受賞者に自分の名がノミネートされるよう、引き続きマイペースにされど全力で作品を世に送り出していきたい」
評論・研究部門の真田啓介氏は「協会賞受賞者リストを眺めてみると横溝正史、江戸川乱歩、鮎川哲也などの名があり、まさに日本のミステリーの歴史そのものである。そこへ自分の名が書き加えられることになろうとは夢にも思っていなかった。私は若い頃から探偵小説にはかなりの時間とお金と労力をつぎ込んできた。もっと有意義な過ごし方はなかったのかと思わないでもなかった。だがそれだけのことはあったのではと受賞して思った。今回の受賞にお力添えをいただいた皆さまに改めて感謝したい」と、それぞれ喜びと決意を語った。
以上で贈呈式は終了した。
二十分の休憩後、丸山ゴンザレスと佐藤究両氏の制作・出演による乱歩邸訪問ビデオ「丸山ゴンザレス豊島区紀行 feat.佐藤究」の上映に続き、綾辻行人(リモート出演)、京極夏彦、辻村深月、貫井徳郎の江戸川乱歩賞選考委員経験者各氏によるトークイベント「江戸川乱歩賞選考の裏側」が開かれ、午後七時過ぎに、盛況のまますべてのイベントは終了した。
両賞の沿革を紹介したビデオ放映後に贈呈式の幕が開いた。フリーアナウンサー笠井信輔氏による司会進行の元、挨拶に立った京極夏彦代表理事は「新型コロナウイルスは終息気味だが、まだ油断がならない状況だ。その中で素晴らしい作品を選出できた。平時であれば記者会見があり関係者を集めての授賞式、パーティというのが先例だが、この状況ではできない。昨年はリモートによるクローズドで行った。今年は開催方法について議論を重ねてきたが、当協会の創始者である乱歩とゆかりのある豊島区とパートナーシップを結び、多大なる尽力をいただき、初めてとなる合同公開贈呈式を開催する運びとなった。一人でも多くこの賞を知ってもらいたい、祝ってもらいたい、叶いますならば一人でも多くの方に受賞作を手に取ってもらいたい。小説は読者のもとに届いて初めて完成する。皆さまぜひご一読を」と挨拶。
続いて第六十七回江戸川乱歩賞の贈呈式の部に移った。
最初にビデオによる受賞作の紹介があり、豊島区長高野之夫氏、後援の株式会社講談社代表取締役社長野間省伸氏、同じく株式会社フジテレビジョン代表取締役社長金光修氏より祝辞が続いた。
賞の贈呈に移り、京極夏彦代表理事から受賞者の伏尾美紀氏と桃野雑派氏に、それぞれ正賞の江戸川乱歩像と副賞の賞金五百万円が贈られた。
選考委員を代表して貫井徳郎氏が「ダブル受賞には妥協した場合と、甲乙付け難い場合の二つのパターンがある。今回は後者であった。桃野作品は最初の三段階評価の投票で、選考委員五人のうち三人がA評価をつけた。武侠小説の態を取った本格ミステリーで、キャラクターが面白く、一人一人が立っていた。館の中だけの話なので力のない人だと退屈するが、そんなことはない。特殊設定ミステリーであり、応募原稿の段階ではやや事前の説明が不足していたが、それを書き足した書籍はより良くなっている。一方の伏尾作品にAをつけたのは私だけだった。本来勝負にならないはずである。多視点の警察小説なのだが、視点人物がころころ変わり、三分の一くらいまで誰が主人公なのかもわからなかった。しかも主人公が女性であることもわからず、ずっと男性だと思って読んでいた。作者は女性と承知して書いているのだがそれが読み手に伝わらないのだ。このように小説のテクニックは下手なのだが、面白かった。脚を縛って走っているのに一番速かった。小説の書き方は書いているうちにうまくなる。センスやトリック、キャラクターの造形など、後から鍛えられないところがうまい。加筆改稿すれば良くなる。その結果ダブル受賞になった。乱歩賞史上でもハイレベルな二作だった」と選評を述べた。
受賞者挨拶に立った伏尾氏は「長年ミステリー作家になりたいと思っていたが、最初の作品もできないままこの年になってしまった。今回思いきって書き上げた。もう十年早くデビューできていればと正直思っているが、受賞作に関していえば、この時でなければ書けないものだった。選評のお言葉にあったが、まだまだ小説は未熟で、もっと精進しなければならないが、それは伸びしろだと思いポジティブに捉えて。たくさんの作品を世に出し、受賞者の名に恥じない作家になっていきたい」
桃野氏は「連絡を受けてえらいことになったというのが最初の感想だ。二年連続最終に残ったが、今年は受賞することができて感謝します。作家になると決めたのは五年前で、公私にいろいろあって落ち込んでいたが、甥っ子が生まれることを知り、彼に恥ずかしくない人間になろうと思い、この賞に応募した。一人で受賞したわけではなく、鈴木輝一郎氏の小説講座を受講し、そこでの教えが大変参考になった。そう言えといわれたわけではないが、そこでの教えに従っていまここに立っている。いろいろな人に受けた感謝を忘れないようにしたい」と、それぞれ喜びと抱負を語った。
続いて日本推理作家協会賞の贈呈式に移行し、京極夏彦代表理事から、長編および連作短編部門受賞者の坂上泉氏、リモート出席の櫻田智也氏の代理で東京創元社泉元彩希氏、短編部門の結城真一郎氏、評論・研究部門の真田啓介氏に、それぞれ正賞の腕時計と副賞の五十万円が贈られた。
長編および連作短編部門の選考委員を代表して柚月裕子氏は「乱歩賞はデビューしていない方の中から綺羅星を捜す賞でそれも大変だが、こちらはすでにデビューをされ、人気実績ともに博している方のノミネート作品の中から選ばなくてはならない。初めて選考委員を務めるが、自分が発した言葉が全て自分に返ってくる。そのような厳しさを経験しながらの選考会になった。受賞作の二作は満場一致で決まった。坂上作品はいちばんうなった作品だった。著者の膨大な知識量は凄いと思った。主人公たちがどのように人間として動き、どのような感情を持つかが大切だ。その知識と主人公たちの魅力がバランスよく描かれていた。バディものだが、二人が違和感なくそれぞれ信念を持って行動していく様が、読者のページをめくる手を止めさせず、作者が持っている知識も遺憾なく注ぎ込まれている。この作品を読めて良かったと思った。桜田作品はいちばん賞にふさわしい作品と思った。主人公の魞沢が一作を追うごとに魅力的になり、豊かな人間性を持つキャラクターとして描かれていた。本格ミステリーという大きな謎解きだけでは終わらず、そこに描かれている人間ドラマがトリックとリンクして、一つに融合されていたのは素晴らしいと思った。連作短編集というものの面白さ、贅沢さを感じられた作品だった」と選評を述べた。
短編賞と評論・研究部門は、欠席の垣根涼介選考委員に代わり、司会者が選評を代読した。
「短編部門の受賞作は初回の投票で最高得点になった。二転三転するプロット、回収の見事さなど構成に秀でており受賞は当然。次点は「ピクニック」で、最後までほぼ違和感なく読めたのはこの二作だった。視点に若干の無理が感じられなければ、同時受賞もあったかもしれない。評論・研究部門は選考委員の評価が各作品に分散した。「松本清張が『砂の器』を書くまで」はとても読みやすく面白い。ただミステリー評論ではなく、新聞小説論であるという意見には頷かざるを得なかった。「数学者と哲学者の密室」は各論の彫り込みはそれなりに納得がいくが、評論としては書き手の立位置にバイアスがあった。受賞作は作者のこれまでの評論の集大成である。作品として統一感の欠如はあるが、古典探偵小説に対しての一貫した美意識と熱意が評価され受賞の運びとなった」
続いて受賞者挨拶があった。坂上泉氏は「私がこの作品で書いた昭和二十九年の大阪は、敗戦を迎えてから九年、がらりと世の中や社会の風景が変わった時代である。そういう時代に興味があるのは、変化があっても変わらないものもあるからだ。戦中戦前から、そういう二つの顔が色濃く見える時代。そういう中で僕らが見えていないもの、なかったこと、見えなかったことにしているものが色濃く残っていた。そういうものを忘れないでいたいという思いを込めて書いた。歴史小説のつもりで書いたが、はからずも推理小説として評価をいただき望外の喜びである」。
リモート出席の櫻田智也氏は「私の両親は義理堅い人たちだが、私は若い頃から不義理ばかり重ねてきた。学校を卒業するとき、家を出るとき、会社を辞めるとき、いつも逃げるようにして次の居場所を捜してきた。にもかかわらず一作目の本を出したとき、古い友人からたくさんの祝福が届いた。もはやまったく違う人間のように思っていた過去の自分と、今の自分が確かにつながっていると、当たり前のことに驚いた。その経験が今回賞をいただいた二作目を書かせたように思う。故郷の北海道や学生時代の記憶、かつて暮らした東北地方の思いなど、各作品に自分のルーツをちりばめ、その中に今の自分が感じる不条理や後悔のようなものを添えて書き上げたのが本書だ。そんな作品がミステリーの過去と現在、そして未来をつなぐであろう協会賞の一つのパーツになれたことが嬉しい」
短編賞受賞の結城真一郎氏は「三年前に新潮ミステリー大賞を受賞してデビューが決まったとき、友人から受賞おめでとう、どうせだったら直木賞に応募すれば良かったのに、というお祝いメールが来た。今回は、なんかよくわからないがすごい賞だねというメールに続き、調べてみたら歴代受賞者知ってる人ばかりじゃないか、この賞やべえぞというメッセージが届いた。その言葉を見て初めて実感した。直木賞が公募の賞だと思っている友人から見ても、ひと目見て凄いとわかる偉大な先輩たちが通ってきた道なんだなと。であるならば自分がその看板を汚すようなことがあってはならないし、願わくば五年後、十年後、二十年後には、彼らが言うやべえ歴代の受賞者に自分の名がノミネートされるよう、引き続きマイペースにされど全力で作品を世に送り出していきたい」
評論・研究部門の真田啓介氏は「協会賞受賞者リストを眺めてみると横溝正史、江戸川乱歩、鮎川哲也などの名があり、まさに日本のミステリーの歴史そのものである。そこへ自分の名が書き加えられることになろうとは夢にも思っていなかった。私は若い頃から探偵小説にはかなりの時間とお金と労力をつぎ込んできた。もっと有意義な過ごし方はなかったのかと思わないでもなかった。だがそれだけのことはあったのではと受賞して思った。今回の受賞にお力添えをいただいた皆さまに改めて感謝したい」と、それぞれ喜びと決意を語った。
以上で贈呈式は終了した。
二十分の休憩後、丸山ゴンザレスと佐藤究両氏の制作・出演による乱歩邸訪問ビデオ「丸山ゴンザレス豊島区紀行 feat.佐藤究」の上映に続き、綾辻行人(リモート出演)、京極夏彦、辻村深月、貫井徳郎の江戸川乱歩賞選考委員経験者各氏によるトークイベント「江戸川乱歩賞選考の裏側」が開かれ、午後七時過ぎに、盛況のまますべてのイベントは終了した。