紀寿を迎えた東京古書組合

盛林堂書房・東京古書組合百年史編纂委員 小野純一

 古書店(古本屋)をご存じの方は多いでしょうが、古書組合をご存じの方は少ないかもしれません。東京には神保町古書店街のすぐ近くに本部を構える、東京の古書店が形成する東京都古書籍商業協同組合(以下、東京古書組合)という東京都の認可を受けた古書籍業者の協同組合があります。東京古書組合の主な活動としては古書籍市場の開催・運営をはじめ、古書取引に関する情報提供、古書に関する知識の啓蒙・普及活動、古書検索サイト「日本の古本屋」の運営などがあげられます。加盟組合員は約六百名。東京古書会館のある神田支部をはじめとする七つの支部からなる組織です。
 東京古書組合は、大正九年に組合創立総会をかねた第一回総会が開催されたことから組合事業はスタートを切り、昨年令和二年に多くの方々のご支援もあり、百周年を迎えることができました。その百周年記念事業の一つとして企画され、本年八月末に刊行された一冊が、『東京古書組合百年史』になります。刊行計画は、二〇一七年に持ち上がり、翌二〇一八年の組合総会にて承認を受け、東京古書組合員の中から編纂委員を募り、編集作業に約三年の月日を費やしなんとか形になりました。
 本書の大きなコンセプトは、「読める百年史」でした。これは、従来の企業史や社史などの重厚な内容でまとまった学術書のようなものではなく、組合員はもちろん一般の方々も、どこからでも楽しく読んで頂き、少しでも「東京古書組合」を知って頂きたいという思いを込めたものです。出来上がったものは、「読める」ということに重点をおいた一冊に仕上がっていると編纂委員一同、胸を張って言える仕上がりになっていると思います。収録内容は、全六章・資料編を含め、総頁数六百八十四ページ。その内、第一章から第三章に東京古書組合の歴史がまとめられています。第一章は、前史と前半五十年を古書の世界を愛してやまないフランス文学者で評論家の鹿島茂氏に執筆頂きました。「本」の流通の歴史から古書組合の誕生、戦争を乗り越え、どのように近代化していったかを分かりやすくお書き頂いています。第二章以降は、その後に育った組合員自身が、古書組合、各組合員が有する膨大な資料を紐解き、また先人にインタビューを行い、各時代を見つめ直し悪戦苦闘の末、執筆しております。「古書組合の歴史」のみならず、古書組合の根幹である古書市場(交換会)の歴史や、各地域にて編成されている支部の歴史も組合員により執筆され、各地域のリアルな歴史が綴られており、古書組合の発展と共に何があったのかが細かく描かれていると思います。
 新型コロナウィルスの感染拡大が少し治まってきていることもあり、《『東京古書組合百年史』展》も百周年記念事業として開催されることになりました。
 二〇二一年十一月十九日から二〇二一年十二月七日まで東京古書会館二階情報コーナーで開催。続いて二〇二一年十二月十八日から二〇二二年二月十三日まで北海道・市立小樽文学館にて予定されています。展示の詳細は各館のHPでご確認ください。