御挨拶

貫井徳郎

 皆様、新年明けましておめでとうございます。
 昨年の新年挨拶では、お亡くなりになった協会員の方たちをまず悼みました。今年も同じように始めなければならないのが残念です。特に、個人的にお世話になっていた方が亡くなったのは本当にショックでした。今はもういない人のことを残った者たちが忘れずにいることが、一番の供養ではないかと思います。
 昨年は変化と継続の一年でした。コロナ禍以降、たくさんのことを変えざるを得ませんでしたが、必ずしも受け身の対応ばかりではなかったのは昨年のご挨拶にも書いたとおりです。そうした積極的な変更のひとつである日本推理作家協会賞江戸川乱歩賞合同贈呈式は、昨年と同じく豊島区のあうるすぽっとで行いました。当協会としては多数のお客様を収容できる大きな会場で開きたかったのですが、こちらの希望ですべてが決まるわけではなく、やむを得ずそれほど大きくないあうるすぽっとで行うこととなりました。今年も大きい会場では難しそうであることを、協会員と各社編集者の皆さんにお詫びしなければなりません。
 その一方、昨年は受賞者の数が過去最多でした。協会賞の各部門と乱歩賞がすべてダブル受賞だったからです。これはミステリーの多様化という意味で、喜ばしいことだと考えます。多様化しているジャンルは、繁栄しているのです。出版業界にはあまり景気のいい話がありませんが、ミステリーの未来は決して暗くないと思います。
 贈呈式はここ数年のスタイルを継続しましたが、協会賞の選考会は新たな形に変えました。具体的には、完全に自分たちの力だけで選考会を開いたのです。コロナ禍以前は、その年の幹事会社になっている出版社のご尽力によって、ホテルで選考会を開いていました。しかしそれには莫大な経費がかかっていたわけで、そうした負担を被っていただくのはもはや時代に合っていないと考えました。
 そこで、昨年は日本出版クラブ会館で会議室を借りて選考会を行い、記者会見も復活させました。リモートではなく直接顔を合わせての選考は、おそらく選考委員の皆さんにとっても楽しくかつ充実していたのではないかと推察します。
 記者会見は、残念ながら質問がまったく出ず、やる意義について考え直さなければなりませんでした。来年は違う形にしたいと、腹案を練っております。
 ただ、記者会見のために受賞者や各社編集者が集まり、会見後にお祝いの会がいくつも開かれたのは楽しい出来事でした。贈呈式が立食パーティー形式でなくなったことを、記者会見後のお祝いムードが補ってくれたのではないかと考えています。
 前後しますが、日本出版クラブ会館で開いた新年会は、盛況のうちに終わりました。久しぶりだったこともあってか、参加してくださった皆さんが楽しんでいたように見受けられました。新年会恒例だった新人のアピールタイムも、各自が工夫を凝らした挨拶をしていて、聞いていて面白かったです。挨拶が面白いから連絡をとってみた、と言ってくれる編集者がいたことも嬉しい収穫でした。
 今年もまた、昨年と同じ形式で新年会を行います。新人のアピールタイムもあります。ご都合のつく方は、ぜひいらしてください。
 ここまでは実行したことのご報告ですが、実現しなかったこともあります。以前にお約束した、関西での親睦会です。当初、ぼくは単純にボランティアを募って親睦会を開けばいいと考えていました。ですが、やはり参加費をいただくとなると会計をボランティア任せにするわけにはいかず、事務局の職員に出張してもらわざるを得なくなります。そうなれば交通費宿泊費もかかり、その分を参加費に上乗せする形になります。
 ただでさえ、東京で開いた親睦会は参加者が少なく、編集者を動員してなんとか数を揃えました。赤字を出すことは絶対に許されないため、ある程度の出席者の数が見込めるようになるまで、なかなか開催に踏み切れないのが現状です。もし興味があり、開かれたら参加したいと考えてくださる方は、理事なり理事に近い人にその旨お伝えいただけるでしょうか。大まかな出席希望者が三十人を超えたら、具体的に計画するつもりです。
 今年は他にも、協会の歴史上初の試みにも挑戦します。まだこの新年の時点では明らかにできませんが、近々発表します。読者の皆さんはもちろんのこと、協会員にも楽しんでいただける企画にしたいと考えています。正式発表をお待ちください。
 最後になりましたが、協会員の皆さんのご健康とご多幸をお祈りしております。今年は昨年以上に、直接お目にかかって親睦を深める機会があることを願っています。