ずいひつ

推理作家から警察への捜査支援

石川真介

 表題について、筆者はこれまで様々な挿話を見聞した。しかしながら、根拠の明確な談義となると、甚だ心許ない。
 中でも、大御所松本清張に関しては、警視庁などが事件解決の助言を求めて一席を設けたとの風聞が、いくつかあるものの、実体はすべて不詳である。筆者は、清張のエッセイでその旨を読んだ記憶があるけれども、まだ特定には至っていない。
 筆者が保有する確証は、府中三億円事件における推理作家五名の協力臨戦だけである。
 事件発生から一年後、捜査本部は生島治郎、梶山季之、佐野洋、三好徹氏、結城昌治を招聘して会談を開催し、自由な意見と推理を求めた。場所は梶山の仕事場がある都市センターホテルの一室。出典は佐野洋『「三億円事件」と小説家』(週刊朝日が報じた昭和の大事件2007.03.03所収)。
 捜査本部は、犯人の脅迫状のコピーなども示している。佐野自身、日本の犯罪捜査では極めて珍しいこと、と驚いている。社会部記者としての経験を持つ佐野だけに、その言には高い臨場感と迫真性が感じられた。
 そこで、協会員諸兄姉へのお願いになりますが、《現実捜査に対する作家の具体的な支援活動》についての文献や資料をお持ちの方は、ぜひとも本会報に概要をご投稿いただきたく。