吃驚(びっくり)箱あけた
――だなんて、今どき? でしょうが、まさにそのとおり。拙宅の廊下に宅配便のボール紙箱が10個余り。中身はまとめ買いした缶詰や飲料水ボトル、文庫本など。先日、下積みの1個を何気なくあけてビックリ玉手箱、と判ったのは実は数分後で、一番上の物が目に入った瞬間は吃驚箱のショックも同然でした。
だって、それは『LOCK』創刊号だったので。〝8・15〟からやっと半年の昭和21年(1946)3月発行。戦中は禁じられていた探偵小説の復活を象徴といっていい、戦後初の専門誌で、あの『寶石』が4月だから鼻面の差。サブタイトルに〈新探偵雑誌ロツク〉とあり、B6判64ページ・1円50銭で版元は世田谷区烏山町・筑波書林。帝国時代の出版法による検閲がまだ生きていて〈二月二十日印刷納本〉と明示。何と22年12月の№16までと別冊2号の計18冊が全揃い!
なにしろその箱は30年近くあけてないから後期高齢の当方には記憶ゼロ、と申しても政官界での最新流行語に非ず。そしてビックリはまだまだ連鎖。
次に出現したのは翌22年4月創刊の『黒猫』で〈detective magazine〉とサブタイトル。これもB6判だが80ページ・10円・銀座6丁目イヴニング・スター社。『ロツク』より16ページ多いだけで定価が6倍余とは? 犯人はたった11ヶ月間の超インフレ。あ、こっちも23年9月のVOL.2・№11まで計11冊の全揃い! 両誌とも発売日不定で新刊購入に苦労。
その下から出てきたのは城昌幸『怪奇探偵小説集』16年4月・浅草区小島町・金鈴社・B6判ハードカバー・278ページ。定価が消され〈十圓〉と印字。もう1冊は甲賀三郎『盲目の目撃者』22年3月・B6判仙花紙199ページ・20円で版元は京橋区新富町・松竹株式会社出版部。あの松竹です。
3番目のビックリは『探偵雑誌ぷろふいる』の端本で古本。9年6月号/10年1、7月号/11年2~7(除5)月号の計8冊。菊判・各30銭(1月号だけ50銭)版元は渋谷区代々木深町ぷろふいる社。
このほか戦後発行のB5判雑誌が数種あったが、ミステリー以外なので省略。もしかしたら吃驚箱は、このほかにも――?