訃報

会員・田奈純一氏

 会員の田奈純一(本名徳山諄一)氏が十一月八日に亡くなられた。七十八歳。田奈氏は一九四三年東京生まれ。法政大学中退。
 七二年に井上泉(現・井上夢人)と出会い、後に合作を始める。岡嶋二人名義で応募した「焦茶色のパステル」が第二十八回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。質が高い競馬ミステリーであるだけでなく、軽快で清新な作風は、コンビ作家という希少性もあいまって大きな評判を呼んだ。
「明日天気にしておくれ」(八三年)をはじめ、「どんなに上手に隠れても」(八四年)、「七日間の身代金」(八六年)など誘拐をテーマにした作品を多く発表し、「人さらいの岡嶋」という異名を取り、「99%の誘拐」(九八年)で十回吉川英治文学新人賞を受賞した。また中学校での連続殺人を描いた「チョコレートゲーム」(八五年)で第三十九回日本推理作家協会賞長編部門を受賞している。「クラインの壺」(八九年)発表後にコンビを解消した。
 田奈純一名義で九一年に「小説推理」に長編「キャットウォーク」を連載(未刊行)した。日本テレビ系で放映されたクイズバラエティ番組「マジカル頭脳パワー!!」内の一コーナー「マジカルミステリー劇場」の原案スタッフ(九〇~九二年)に参加した。また九七~九八年に週刊少年チャンピオンに連載された三浦とりのの漫画「探偵ボーズ 21休さん」(既刊七冊)のトリックプランナーを新徳丸名義で、新保博久と共に務めた。