訃報・斎藤栄氏
会員の斎藤栄氏(本名・斉藤栄)が六月十五日老衰のため亡くなられた。九十一歳。斎藤氏は一九三三年東京生まれ。高校在学中に石原慎太郎らと同人誌「湘南文学」を刊行。東京大学法学部卒業後、横浜市役所に勤務。その傍ら執筆活動を始め、六〇年に「宝石」「面白倶楽部」共催による推理コントに応募した「星の上の殺人」が佳作入選を果たす。六二年には「機密」で宝石中編賞を受賞。六六年に「殺人の棋譜」で第十二回江戸川乱歩賞を受賞し、本格的な活動を始める。七二年に作家専業になってからは、精力的に作品を発表し、著作数は四百作を超える。
代表作に、芭蕉忍者説と公害問題をからめた「奥の細道殺人事件」(七〇年)、野口英世殺人説が描かれる「Nの悲劇」(七二年)、藤村操偽装自殺説を検証する「日本のハムレットの秘密」(七三年)、「水の魔法陣」(七八年)を始めとする魔法陣シリーズ、「OL現代詩殺人事件」(八五年)を皮切りにタロットカード占い師が活躍するタロット日美子シリーズなどがある。
江戸川乱歩賞では第十八回~二十回の予選委員を、第二十五回、二十六回で選考委員を務めた。
将棋はアマチュア六段という腕前で、幕末の在野の強豪棋士・天野宗歩の謎の生涯を描いた「小説・天野宗歩」(八七年)など、将棋関連の作品も少なくない。九七年には日本将棋連盟が、将棋の普及や文化の振興のため貢献した個人・団体を顕彰する、第四回大山康晴賞を受賞している。
後日開催されるお別れの会に供花を呈し、弔意を表する予定。