豊田有恒氏
会員の豊田有恒氏が十一月二十八日食道癌のため亡くなられた。八十五歳。豊田氏は一九三八年群馬県前橋市生まれ。武蔵大学経済学部卒。SFに興味を持ち、SF同人誌「宇宙塵」に参加。在学中から小説の応募を始め、六一年に「時間砲」が早川書房の第一回空想科学小説コンテストで佳作入賞。翌年、SFコンテストと名称が変更された同賞の第二回に「火星で最後の……」が再び佳作入賞し、「SFマガジン」(六三年四月号)に掲載されデビューを果たした。その後黎明期のテレビアニメに関わり、「エイトマン」、「ジャングル大帝」、「スーパージェッター」などの脚本を担当した。
モンゴル帝国が世界を支配するパラレルワールドものの「モンゴルの残光」(六七年)、神話時代を舞台に、ヤマトタケルを主人公にしたヒロイック・ファンタジー「火の国のヤマトタケル」(七一年)に始まる日本武尊SF神話シリーズ、古代史に材を取ったミステリー「崇峻天皇暗殺事件」(八七年)など多数の著作がある。
また古代史研究家の一面もあり「騎馬民族の思想」(七六年)を始めとする古代史ノンフィクションも精力的に発表していた。
八六年から八七年にかけて日本SF作家クラブの会長の任にあった。二〇〇〇年からは島根県立大学総合政策学部で教授を務め、退官後は名誉教授に就任した。