新入会員紹介

新入会員挨拶

かみはら

 日本推理作家協会会員のみなさま、はじめまして。このたび末席に加えていただくことになりました、かみはらと申します。
 入会につきましては佐藤青南先生と和泉桂先生、並びに事務局の皆さまにお力添えいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
 作品としては早川書房で「転生令嬢と数奇な人生を」シリーズや角川文庫にて「涙龍復古伝」といった本を出版しております。
 元々創作自体は長いのですが、ほとんどは特に公表するわけでもなく、ひとりでひたすら書いて満足していた範囲です。社会人となれば忙しいもので、何年もの空白期間をおいてまた文字に手を出し出版に至りました。
 ミステリといえばなのですが、私はミステリの初めの印象は「愉快なもの」でした。
 こんな風に感じていたのは、一番はじめに推理物とふれ合った作品がTV「名探偵ポワロ」だからです。デビッド・スーシェ演じる茶目っ気のあるおじさんポワロが謎を解いて行く姿に、子供ながらに心躍っていたのでした。ポワロでアガサ・クリスティの名を知り、図書室で本を借り、他の本にも手を出すといった本読みの連鎖です。
 ただ「愉快なもの」から「怖い」へ変貌したきっかけもあります。
 「姑獲鳥の夏」でした。
 文章だけで初めて怖いと思った作品です。
 加えてこの時分の私は怖がりでした。映画「リング」視聴より五年以上はテレビ画面が勝手に切り替わり、井戸が映らないか注意していたほどです。
 姑獲鳥を読了時は上京してひとりだったのですが、読み終えたタイミングは運悪く夜。閑静な住宅街だったのもあり、周りはわずかな音しかありません。
 ひとりに耐えきれなくなった私は1000kmほど離れた地元の友人に電話で救いを求めました。
 間抜けなことに、友人への第一声は「助けて」です。
 当然慌てる友人に半泣きの私が説明を行ったときの、電話越しに感じるなんともいえない空気は十年以上経ったいまでも思い出せます。友人の隣にいたお姉さんは大爆笑でした。
 情けない話ですが、だからこそいまでも記憶に残り続け、こんな風に私も誰かの記憶に残る話を書きたいとキーボードを叩き続けています。
 現在はファンタジーがメインですが、元々好きなのもあるので、今後はミステリも手がけます。私にも出せる持ち味があるはずですので、この手で誰かを物語の沼へ引き込むために挑みたいと思いつつ、みなさまどうぞよろしくお願いいたします。