新入会員紹介

入会のご挨拶

有山リョウ

 はじめまして。この度、日本推理作家協会に加えていただいた、作家の有山リョウと申します。
 皆さま、どうぞよろしくお願い致します。

 私はいわゆるWeb小説を書いております。それまでもずっと小説を書いておりましたが、公募に送っては落選してばかりでした。ある時Web小説と出会い、掲載した作品が思いのほか好評を博して書籍化の運びとなりました。
 時は2020年、まさにコロナ禍のど真ん中の頃でした。
 パンデミックやロックダウンと言った文字が並び、ニュースでは毎日どれだけ感染者が増えたかがグラフ化されていました。
 世の中何が起きるか分からないもので、デビュー前の私は大工だった親父の仕事を手伝ったり、パチンコ屋の交換所で働いていました。これから世界はどうなるのだろうかと思っていたところに、書籍化の話が舞い込み作家としての道が開けました。
 幸運にも作家となれた私ですが、さらに幸運が続き、歴史ある日本推理作家協会に加えていただきました。誠にありがたいことです。
 この場を借りて、推薦してくださった佐藤青南先生と浅井ラボ先生に、厚くお礼申しあげます。

 私が最初に推理ものに触れたのは、子供の頃に放映していた、アニメ版名探偵ホームズ(登場人物が擬人化された犬の奴です)が最初でしょう。
 かっこいい探偵ホームズに、ちょっと間抜けな助手のワトソン。そして綺麗なハドソン夫人。対する敵役は、マント姿のモリアーティー教授とゆかいな仲間たち。
 コミカルなストーリーが楽しく、毎週の楽しみにしていました。
 そこから原作を読むようになったのですが、原作はアニメ版とだいぶ違うことに、ずいぶんと面食らったものです。
 とは言え驚きながらも読み進めていけば、すぐにホームズシリーズのとりことなりました。
 ホームズの鋭敏な知性に、相棒として脇を支えるワトソン医師。全ての黒幕モリアーティー教授の存在感に引き込まれました。数々の謎やトリック、ストーリー構成が素晴らしかったです。
 踊る人形の暗号がかわいくて、ノートの端や教科書に真似て書いたことがあります。ちなみに同級生はさっぱり理解しませんでしたが、学校の先生は「ホームズ?」と言い当てたのがいい思い出です。
 特に一番のお気に入りは『バスカヴィル家の犬』です。ホームズとワトソンのバディ感が最高にいいと思います。

 他にも好きな作品をあげると、昔、金曜ロードショーで放映していた『刑事コロンボ』シリーズです。
 テレビを見ている視聴者には、誰が犯人なのか、そのトリックすらも最初に示される。この作品の作り方には、衝撃を受けました。
 セレブやエリートが、完全犯罪を計画して実行する。その後現れるのは、犯人とは対を成すようなしょぼくれたコロンボ警部。
 犯人に軽くみられるコロンボですが、とぼけた態度をとりつつも証拠を集め、時には犯人をイラつかせて追い詰めていく。そして最後には、犯人すら気づいていないミスを見つけ出して犯罪を立証する。この一連の構図には感銘を受けたものです。
 またお決まりの「さいごにもうひとつ」や「うちのカミさんがね」と言ったセリフも、マネしたくなります。

 そして好きな作品として欠かすことができないのが、天藤真先生の『大誘拐』です。
 こちらは第32回日本推理作家協会賞受賞作でもあります。素晴らしい名著ですが、私がこの作品に触れたのは映画の方からでした。
 誘拐された被害者が身代金の金額を吊り上げ、犯人の手助けをすると言う逆転の構図にまず驚き、そこから続くストーリーも素晴らしく引き込まれました。
 特に「犯人グループの仲間にすら理解できない行動は、捜査本部にはもっと理解できない」という視点は大いに感服させられ、私の創作の一つのキーワードにもなっています。
 またオチも秀逸でした。最後に被害者が犯行を手伝った理由が明かされるのですが、予想外の角度からの答えでした。
 人間的な感情にあふれつつ、計算高さもあり、しかし誰も傷つけていない。
 映画も名作でしたが原作はそれ以上に面白く、手元に置いて何度も読み返しています。

 その天藤真先生が所属されていた日本推理作家協会に入会できたわけですから、身が引き締まる思いです。
 まだまだ若輩者の私でございますが、日本推理作家協会の末席に恥じぬよう、精進していきたく存じます。
 重ねて皆さま、どうぞよろしくお願いします。