一般社団法人移行に寄せて

理事長 今野敏

 春の陽気のもと、新入社、新人学が話題となる四月、わが日本推理作家協会も新たな歴史の第一歩を踏み出します。
 当協会は、昭和二十一年に、江戸川乱歩の提唱によって土曜会が発足して以来、昭和二十二年に探偵作家クラブとなり、二十九年に日本探偵作家と改称、さらに三十八年に、社団法人日本推理作家協会として改組されるという歴史を歩んできました。
 そして、この四月に、一般社団法人日本推理作家協会として生まれ変わります。これを機に、これまで六月から五月末までだった会計年度を、四月から三月末までに改めます。
 民主党政権時代の事業仕分けのあおりを食らった感もありますが、すでに現実にそぐわなくなっている定款や条文を見直す、いい機会にもなりました。
 事業や活動の内容は、今までとほとんど変わりはありません。日本推理作家協会賞、江戸川乱歩賞、懇親会などを中心に、これまでどおりの活動を続けていきます。会員の皆様への対応も、できるだけ今までどおりにしていく方針です。
 しかしながら、一部どうしても改変しなければならないこともありました。
 さまざまな見直しの中には、財政的な問題も含まれていました。今のままでは協会は四年で破綻する、という試算もありました。そこで、大幅な会計の見直しを図らねばなりませんでした。
 毎年配布していた手帳を廃止し、住所録等の冊子にしたり、会報の発行回数を減らしたり、書記局員の給与を見直したり……。
 できるかぎりの支出削減に努めた上、さらに財政の健全化を目指しておりますが、会費の値上げも視野に入れております。
 何とぞ、ご理解いただきたいと思います。
 出版不況といわれるこの時代ですが、新たな出発をしたわが協会は、今まで以上に、ベストセラーや話題作の牽引役となっていくと信じています。