新年のご挨拶

代表理事 今野敏

 あけましておめでとうございます。
 また新しい年がやって参りました。今年は例年とちょっと趣きが違います。各方面で話題となっていることですが、平成が終わるのです。すでに平成生まれの作家も生まれていますし、じきに、二十一世紀生まれの作家も登場するでしょう。(いや、すでに登場しているのかもしれません)
 相変わらず出版界では、あまりいい話を聞きません。当協会でも、出版物が以前ほど売れなくなり事業収入はずいぶんと少なくなりました。出せば重版、という時代は平成とともに終わりを迎えたのです。
 しかし、だからといって出版界もミステリー業界も当協会も消滅するわけではありません。不況不況と嘆いていても仕方がないというのは、再三この欄で申し上げていることです。
 だいたい、いつと比較して不況だと言っているのでしょうか。バブル経済の時代はたしかに今よりずいぶんと出版物も売れていました。しかし、考えてみればそれが異常だったとも言えます。バブル前を考えると、今とどれほど違うでしょうか。
 出版物が売れに売れていた頃は、まさに玉石混淆の状態で、今は淘汰の時代になったのかもしれません。厳しい時代になったとも言えますが、もともとプロの世界は厳しいものです。今は真に実力のあるプロが求められている時代なのでしょう。
 発信する側が本当に楽しんでいない業界に客はやってきません。思えば、昔は作家も編集者も今よりずっと楽しんでいたように思います。今、私たちに足りないのは楽しむ心なのかもしれません。
 懇親会の出席者も減っています。パーティーに出ても「どうせつまらない」ではなく「何かいいことがあるかもしれない」と、発想を変えてみてはどうでしょう。楽しむこと。今年はそれをテーマにしたいと、個人的に思っています。