ハガキ随想

私にそっくり

長谷川卓也

「この世には自分にそっくりの者がもう一人いる」「二度あることは三度ある」というが、これ、数が違ってやしないか。約十年間に私は三回も人違いをされた。銀座で二回、拙宅近くの病院前で一回。
 いきなり「お久しぶりです。○○(人名)ですよ」などと馴々しく声をかけられて咄嗟に思い出せず、忘れたのかと不安になる。三回とも先方が人違いに気づいてくれたから、よかったが――。
 先秋、また銀座で呼び止められ「おかげで儲けさせてもらってます」とズボンのポケットの札束を見せた後、私を見知らぬ者と認めてくれた。この人が四人目になる。私のツラって、そんなに世間に出回っているのか。
 四人とも残念ながら男ばかり。相手が女性で、しかも亡妻に似てた、なんてことはあり得ぬのかな。