「最初で最後の優勝か」
第三十五回推理作家協会のゴルフ大会は、姉ヶ崎カントリー倶楽部で開催されるというので、私は万障繰り合わせて参加することにした。姉ヶ崎は、まだ一度も回ったことがないので、ぜひ行ってみたいと思ったからだ。
当日はとてもよい天気で、十一月とは思えないほど気温も高い。こんな日はゴルフも楽しいはず。いやが上にも気合いが入って早めに出たのに、C2のトンネル経由でアクアラインに行こうとしたら、なぜか有明に出てしまい、東京湾をひと巡りしてしまった。
早く着くはずが、スタート時間に遅れそうになって焦る。同組で幹事の楡周平さんに、途中で電話をかけた。楡さんは、私が来ないので心配していらしたようだ。
じきに着くので待っていてほしいとお願いして、必死に車を走らせたが、到着したのはスタート時間二十分前だった。
練習もせずにあたふたとコースに出たのだが、何とか間に合ったことと、晴天、無風という最高のゴルフ日和で嬉しくなる。こんな日はスコアなんかどうでもいいや、と無欲のスタートとなった。
メンバーは、幹事の楡周平さん、そして光文社の田中省吾さん、徳間書店の杉浦聡さんである。田中さん、杉浦さんとは、初対面だ。田中さんは、怪我をされたとかで、フルスイングがきつそうだった。杉浦さんはシュッとした方で、とてもお洒落。皆さん、私が遅くなったのに、嫌な顔ひとつされずに、とても親切にしてくださった。有難い。
西コースOUTを第一組で出た。1番、2番とボギー。まずまずどころか、私にしてはかなりいいスタートを切った。ところが、3番はバンカーに入れてダブルパー。
いつもの私に戻ってしまったが、それでも、その日のゴルフはついていたようだ。5番のロングでパー。7番のショートもパー。というわけで、私にしては上出来の14オーバーの50で折り返した。
前半の終わり頃だっただろうか。カートに備え付けられているモニターを見ていた田中さんが、「うわー、どうしたんだ」と、声を上げた。モニターは全員のスコアが見られるのだが、インコースから出た大沢在昌さんが、なぜか10オーバー。
「いったい何が起きたんだ」と、楡さん。
皆、にやにやしている。モニターは、刻々と順位が入れ替わって、総勢二十数名でゲームをしている臨場感があり、面白かった。
後半のインコースは難しくて、最初のミドルはダボ。次のロングでボギーになって喜んだのも束の間、3番のショートでトリ。結局、ダボペースになって54。
スコア104は、初めてのコースにしては、まあまあよかったんじゃないか、と思っていたが、まさか優勝できるとは思ってもいなかった。
メンバーに恵まれ、お天気に恵まれ、さらに無欲の出発が招いた勝利かもしれない。
とはいえ、今回の優勝でハンデを大幅に減らされたので、これが最初で最後の優勝だと思う。皆さん、ありがとうございました。