会員・小鷹信光氏死去
会員の小鷹信光(本名・中島信也)氏が十二月八日膵癌により亡くなられた。七十九歳。小鷹氏は一九三六年(昭和十一年)岐阜県生まれ。早稲田大学文学部卒。ワセダミステリクラブに所属し、在学中から「マンハント」に寄稿するなど評論活動を始めた。六四年に処女評論集「アメリカ暗黒史」を上梓。ハードボイルドを中心にした評論、翻訳、アンソロジーの企画・編纂、テレビドラマ「探偵物語」の原案と小説化など、多方面で活躍した。このほかポルノの分野にも造詣が深く、「和英ポルノ用語辞典」や翻訳書の体裁を取った創作もある。
近年は評論活動と並んで、特にダシール・ハメットの新訳に力を注いでいた。ハードボイルドのペーパーバックやパルプマガジンのコレクターでも知られ、その多くは早川清文学振興財団に寄贈され「小鷹信光文庫 ヴィンテージペイパーバックス」として公開されている。
評論やエッセイの代表作として「パパイラスの舟」、「マイ・ミステリー 新西洋推理小説事情」、「翻訳という仕事」などがある。
翻訳書はリチャード・スターク「悪党パーカー人狩り」、ロス・マクドナルド「一瞬の敵」、ジェイムズ・クラムリー「酔いどれの誇り」、ハメット「マルタの鷹」など多数。
アンソロジーでは「ブラック・マスクの世界」(全六巻)、「美食ミステリー傑作集」、「チューリップ ダシール・ハメット中短篇集」などがある。
「私のハードボイルド 固茹で玉子の戦後史」で第六十回日本推理作家協会賞評論その他の部門を受賞した。
葬儀に際し、供花を呈し協会よりの弔意を表した。