新入会員挨拶
この度、日本推理作家協会の末席に加えていただきました狭山ひびきと申します。二〇二一年にデビューしたばかりの卵の殻も取れていないようなひよっこでございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
また、入会にあたりお力添えをいただきました佐藤青南先生、知念実希人先生にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
思い返せばはじめて小説を書きたいと思い、小説らしきものを書いてみたのが中学一年生の時。それから二十年以上が経ちましたが、まさかこの年になって本を出版していただけるとは露ほどにも思いませんでした。そして、おそらく断られるだろうなとびくびくしながら申し込んだ日本推理作家協会に加えていただけるなど、今でも夢ではないかと思っております。
人生何が起こるかわからないもので、大学を卒業し、就職とともにぱたりと小説を書くことをやめていた私が、ふともう一度チャレンジしたくなって筆を取ったのが三~四年ほど前でしょうか。学生のころの私は、周囲の友人たちが読んでくれればそれで満足をしていたのですが、小説の投稿サイトに載せることを決めたとき、考えたのはどうすれば読んでもらえるか、でした。
学生の時は本当に自己満足のために小説を書いていたのですが、誰かに読んでもらうためにはどうすればいいのかと考えると、書く物が変わってくると言いますか。私は日本中古の文学がとにかく好きで、大学もその分野を学び、学生の時はその時代を舞台にした小説や、もしくはそのころの書物などを引用したものばかり書いていたのですが、今このサイトで読者が求めているものはどんな小説なのかを考えるようになると、がらりと違うものを書くようになりました。正直異世界ファンタジーは苦手なジャンルだったのですが、それでデビューさせてもらえたのですから不思議なものです。
もうお気づきかとは思いますが、私が書いているのは異世界ファンタジー(ライトノベル)です。その私がどうして日本推理作家協会への入会を申し込んだかというと、推理小説が好きだと言うのも大きな理由の一つですが、一番の理由は別にあります。
デビューしたばかりの私は、何を目標にしていいのかもわからずに、ただがむしゃらに目の前の仕事をしている状況で、最近思うのは、作家の世界はなかなか厳しいなということです。
企業に就職すれば、そこにはそれなりに目標が用意されます。自分で立てることもありますし、会社が用意することもあります。それに向かって、ただひたすら仕事をすればいい環境にあったのですが、作家は誰も目標を用意してくれません。自分で用意したくても、何が正解か手探り状態の私には、これをしていれば大丈夫という確信が持てるものもありません。これが一年、三年、五年……と年月が経つにつれて何か見えてくるものがあるのか、ないのか、それすらもわかりませんが、
何が言いたいのかと申しますと、右も左もわからずに目標らしい目標も見つからないまま小説を書いていると、いつかその道が絶たれてしまうのではないかと恐怖がまず先に来るのです。それは自分が書けなくなるのか、周囲に必要とされなくなるのかはわかりません。けれど、せっかく子供のころからあこがれていた作家になれたのですから、一年でも長く続けていきたいと思っています。
日本推理作家協会に申し込んだのは、そんな自分の叱咤するためでした。こんなすばらしい団体に加えていただいたのに、数年でフェードアウトできるはずがない。そう自分に言い聞かせるためです。
それと同時に、日本推理作家協会に入会できたことで、自分自身にひとつ目標が立てられると思ったからでもあります。
推理小説は読む専門で、自慢できるようなものを書いたためしはないのですが、せっかく日本推理作家協会に入会することができたのですから、せめて一本……もちろん、一朝一夕で書けるようなものではありませんので、長期的な目標にはなりますが、どこかで書くことができればと思っております。
ええっと、とりとめもないことをだらだらと失礼いたしました。私は自分を語ることがとにかく苦手なので、書籍のあとがきですら頭を悩ませてしまう始末でして……。面白くないことを長々と申し訳ございませんでした。
こんな私ですが、千里の道も一歩からと自分に言い聞かせて日々精進していきたいと思いますので、何卒よろしくお願いい申し上げます。