訃報

会員・島崎博氏

 会員の島崎博(本名・傅金泉)氏が六月十九日に亡くなられた。八十九歳。島崎氏は一九三三年台湾生まれ。五五年に日本大学の奨学金を得て来日。同大法学部卒業後、早稲田大学大学院で金融経済学を専攻。ワセダミステリクラブに入会。来日と同時に、探偵小説・雑誌の蒐集を始めた。
 六三年に「宝石」誌の「ある作家の周囲」に「作品・著作リスト」を連載。七一年に三島瑶子との共編で「定本三島由紀夫書誌」を刊行。
 七五年には雑誌「幻影城」を創刊し、膨大な探偵小説・雑誌のコレクションを元に、過去の名作の発掘、再評価に傾注した。さらに幻影城新人賞を創設し、新人の育成にも尽力した。七九年、同誌の休刊を契機に台湾に帰国。
 台湾でも「日本十大推理名著全集」全十巻(八七年)、「日本當代女性作家傑作選」全五巻(二〇〇一年)などの編集に携わった。
 消息が途絶えていた時期があったが、〇四年に日本のミステリーファンとの交流が再開し、〇八年に再来日をはたした。
 同年には「幻影城」における名作の発掘と新人作家・評論家の育成、その後の台湾における「新本格ミステリ」以降の日本の本格ミステリーの精力的な紹介などに対する貢献が評価され、第八回本格ミステリ大賞特別賞を受賞した。
 〇九年には初の評論集「謎詭.偵探.推理:日本推理作家與作品」(傅博名義)を刊行した。
 関連書として、泡坂妻夫、連城三紀彦、栗本薫、竹本健治など「幻影城」出身作家の書下しや、本人インタビュー、書誌など、島崎氏と「幻影城」に関する事象を網羅した「幻影城の時代完全版」(〇八年、本多正一編)がある。