名誉会員・山沢晴雄氏死去
名誉会員の山沢晴雄氏が一月三十一日に亡くなられた。八十九歳。山沢氏(本姓・山澤)は一九二四年(大正十三年)大阪生まれ。大阪府立北野第二中学校卒。大阪市役所水道局に定年まで勤務するかたわら作品を発表した。
一九五一年に「宝石」の懸賞募集に応募した「砧最初の事件」と「仮面」(佳作)が最終候補になり、両作ともに同年の「別冊宝石」十二月号に掲載されたのが、作家デビューのきっかけとなった。翌年に発表した「銀知恵の輪」が五三年の「宝石」短編懸賞で一席となった。関西探偵作家クラブに入会後は同会の会報や探偵小説誌「密室」に随筆や評論を発表している。六三年には「離れた家」を発表し、第二回宝石中編賞の候補となった。複雑なアリバイ崩しが展開される同作は、代表作であるだけでなく、本格推理に徹した氏の特質がもっとも強く現れた作品ということができる。
その後しばらく創作発表は途絶えたが、七六年に「幻影城」誌に「電話」、翌年に「扉」を寄稿し創作活動を再開した。以降は鮎川哲也による公募アンソロジー「本格推理」や、甲南大学推理小説研究会のOB会である甲影会が発行していた「別冊シャレード」誌に寄稿するなど活動を続けていた。二○○七年に、日下三蔵編による初の単独著作「山沢晴雄傑作集 離れた家」が刊行された。
香典を呈して協会よりの弔意を表した。