新入会員紹介

入会によせて――平成ロズウェル事件

橘沙羅

 このたびご縁がありまして、まさかの会員にしていただきました、橘沙羅と申します。今回の入会に際して、ご推薦・ご尽力してくださった今野敏先生、西上心太先生に、厚くお礼申し上げます。
 入会承認の通知をいただいてからというもの、元来が小心者の私は、『日本推理作家協会』と書かれた封筒が送られてきてはブルブル、会員名簿にずらりと並ぶそうそうたる名前を見てはブルブル、しまいには「推理」の二字を聞いただけで過敏にお腹が反応してしまう体たらく。
 それもそのはず、小学生の頃はテレビの二時間ミステリーを最後まで見てもトリックが分からず、長じて高校で小説もどきを書くようになってからは「謎」を考えても解き方が分からず、大学生にいたってようやく探偵さんにキャアキャアときめけるようになった私が、あろうことか「あの」推理作家協会に入れてもらえたのですから、嬉しさと不安で胃が痛くなろうというものです。
 あれよあれよという間に両手を取られ、飛び込んでいく未知の世界。おや、この状況、何かに似ている――。
 首をひねった私の脳裏に蘇ってきたのは、一枚の白黒写真。時は一九四七年七月、アメリカはニューメキシコ州ロズウェル付近。UFOが墜落したとか何とかで、米軍がそれを回収。軍関係者らしきトレンチコートの男二人に両側から手を取られてポーズを決めてる宇宙人。そう、UFOファンならずとも一度は目にしたことがある、名高い〝ロズウェル事件〟の写真です。
 かくいう私、昔はごぼうのように痩せておりまして、さらにはぶかっこうな頭蓋骨に大量の髪が生えている「頭でっかち」だったものですから、その姿形はまさに宇宙人グレイ。『X-ファイル』が大好きだった幼馴染みとその妹は、「ロズウェル事件!」のかけ声一声、両側から私の細腕を持ち上げて、楽しく宇宙人ごっこをしたものでありました。
 あれからウン十年、よもやあの両腕を取られて連行される宇宙人の胸中をおもんぱかる日が来ようとは、宇宙広しといえど、誰が想像できたでしょうか。
 彼(彼女?)は期待半分不安半分、その後人類からどのように迎え入れられたのでしょうか。彼(彼女?)はきちんと地球の皆様に挨拶できたのでしょうか。まさか解剖されたのではあるまいな。なになに、別の証拠写真ではやっぱり手術台に載せられているじゃないか――!
 実際のロズウェルの宇宙人がその後どうなったかはさておき、今回入会させていただいたことで、新人作家としてますます気持ちの引き締まる思いがいたしました。入れていただいたからには、その協会名に恥じぬよう、先を行く憧れの方々の背中を追いかけていけるよう、全身全霊で執筆を続ける覚悟でおります。
 書くのはどちらかといえば歴史・時代小説系統ですが、読む小説は大半がミステリージャンルです。(わたくし、遅まきながら大人になってようやく「謎とき」の面白さについていけるようになりました。小学生の自分に自慢したいくらいの、格段の進歩です!)
 本格ミステリー、警察ミステリー、海外ミステリー、その他もろもろミステリー、やくざもの冒険ものクライム・サスペンス等々、かなり浅くではありますが、何でも楽しく読んでおります。
 そんなわけで、愛読してきた本の作家さんたちと同じ協会(の末端)に加えていただけたことが、いまだに信じられません。この先、敬愛する先輩がたにお会いできる機会があるかもしれないと、今から想像してはドキドキしております。かつて宇宙人だった私は、もはや扇風機の前で「ワーレーワーレーワー」と話さなくとも、きっと震える声でご挨拶するに違いありません。どうぞその際は、別の星から妙な奴が来たものだと、温かい心で受け流して下さい。
 なにとぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 未知なる出会いにちょっぴりおののきつつ、多大な期待と感謝の気持ちを込めて、以上入会のご挨拶とさせていただきます。