新年の御挨拶
理事長 今野敏
新しい年がやってまいりました。
相変わらず、出版界は厳しい状況が続いていると言われておりますが、ただ嘆いていても仕方がありません。
世の中は、常に新しい刺激を求めています。また、それと同時に円熟した味わいを必要としています。
今年も江戸川乱歩賞で、新たな才能を発掘して世に出すと同時に、日本推理作家協会賞で、価値ある作品を世に知らしめる努力を続けていくことになります。
ミステリのブームは、すでに去ったと言わなければなりません。しかし、それは、他のジャンルやスタイルの小説と堂々と渡り合うほどに成熟したということなのだと思います。
ミステリも他のジャンルと同じように、作品力で読まれる時代になったということでしょう。
今こそ、腕の見せ所なのです。
ブームが去ったとはいえ、今でもミステリは、エンターテインメントの主流と言っていいと思います。
その矜恃と責任を胸に、一歩でも半歩でも、前に進んでいきたいと思います。
今年、日本推理作家協会は、大きな転換期を迎えます。社団法人から、一般社団法人へと移行し、新たな体制で運営することになります。
事業年度もこれまでの六月スタートから、四月スタートに改めます。歴史的な変革と言える大きな出来事なので、それにともない、多くの事柄を見直していかなければなりません。
会員の方々には、できるかぎりこれまでと変わらない対応を心がけるつもりではありますが、様々な事情から、変化を余儀なくされる部分もあります。
年明け早々、生々しい話で恐縮ですが、協会の財政状況はなかなか厳しく、現状のままだと、四年ほどで破綻するという試算も出ています。
協会を存続させるためには、多くの見直しや改革が必要になり、今後は会員の皆様のご理解と一層のご協力をお願いすることになると思います。
ともあれ、私個人は、理事長として、強い心で困難に対処していこうと思っています。
会員の皆様にとって今年がよりよい年となるようにお祈り申し上げます。