入会のご挨拶
邑上主水
皆さまはじめまして。このたび、日本推理作家協会に入会させていただきました邑上主水と申します。
まず、入会にあたりご推薦いただきました真保裕一先生、鈴木輝一郎先生に厚く御礼申し上げます。
僕のペンネームから歴史小説を書いていると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、予想に反してライトノベル・ライト文芸で何作か刊行させていただいております。
さて、このような場所で自己紹介をするにあたって、何か面白い話を交えつつできたらいいなあと考えていたのですが、浮かんだのが「夜の街で声をかけたセクシーなブラジル人女性に7万すられた話」とか、「会社でひとり深夜残業しているときに幽霊に襲われた話」などといった関係のないものばかりなので、普通に自己紹介したいと思います。
僕のことを簡単に表現するなら、『考える前に行動してしまう浅慮な人間』です。
小説を書き始めたきっかけは数年前、乙一先生の「きみにしか聞こえない」を読んだ後、「そうだ、小説を書こう」とJR東海のキャンペーンのごとくふと思い至ったからでした。
僕は昔からそうです。小学生の頃に「魔術師オーフェン」や「天地無用」といったライトノベルに感化されて創作とは到底いえない文章を書き、中学生の頃に「幽遊白書」を真似して漫画を書いて、高校生の頃になると「AKIRA」や「攻殻機動隊」といったバイオレンスなアニメに影響されて「アニメーターになる!」とひとり上京を決心しました。
祖父の代からの海軍一家だった実家から猛反対を受けたのは言うまでもありません。
反対を受けながらもひとり上京してアニメスタジオで働くことになったのですが、アニメーターだけでは食べていけなかったので、朝コンビニでアルバイトをしてスタジオに行って、夜もバイトするという日々を繰り返していました。
そんなとき、体調が凄く悪い日がありました。風邪でもひいたのかと渋々病院に行ったところ、ドクターストップがかかりました。病名は栄養失調。別にダイエットをしていたわけではないのですが、栄養が足りなかったようです。
医者からストップがかかったので仕方なくアニメスタジオを辞めることになり、これからどうしようかとしばらく悩みました。親の反対を押し切って出てきた手前、帰ることなどできるわけはありません。
ただ生活するためにバイトをしながら、目標もなく過ごす日々。
友人と行った音楽クラブでVJ(ヴィジュアルジョッキー)というものに出会ったのはそんなときでした。VJとはDJが流す音楽に合わせて映像を流すひとたちのことです。そのライブ感やかっこよさに感動し、気がついたらその場でスタッフさんに「これどうやってやっているんですか?」と訊ねていました。今でもやっている映像業界に入ったきっかけはそれです。
そして、それから10年以上が経ち、昔の癖で乙一先生の小説をきっかけに「そうだ、小説を書こう」と思い至ったわけです。
ご覧のとおり、僕は考えるよりも先に行動してしまう浅慮な人間です。
ですが、作家になることができたのはその性格のおかげかなあとも思っています。
これからもその精神を忘れずに、作家として精進して参りたいと思っています。
今後ともよろしくお願い致します。