新入会員紹介

新入会員挨拶

蓮水涼

 はじめまして、こんにちは。このたび日本推理作家協会の末席に加えていただくことになりました、蓮水涼と申します。
 まずは、入会にあたってお力添えをいただきました佐藤青南先生と沢野いずみ先生に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、加入に際して諸々の手続き等を行ってくださった関係者の皆様におかれましても、誠にありがとうございました。

 私は、異世界恋愛ファンタジーを主に書いており、「推理」というものからは離れたジャンルを書かせていただくことが多い作家です。
 一方で、私が初めて読んだ小説は、コナン・ドイル著の赤毛連盟(シャーロック・ホームズシリーズ)でした。小学校の図書室で、「こんな面白い本があるのか」と未知の衝撃を受けた記憶が今も残っています。
 そして最初にハマったのが、神永学先生の心霊探偵八雲シリーズでした。中学生の頃、私は漫画ばかり読んでいたのですが、初めて夢中になった小説が同シリーズだったのです。というより、学生の頃にまともに読んだ小説は、もしかするとこれ以外にはほとんどないかもしれません(記憶が曖昧)。
 とにかく、それから大人になった私が読むのは、もっぱら推理小説でした。今でこそ読んでいる恋愛小説は、初めの頃、むしろ苦手分野だったと言っても過言ではありません。これが不思議なことに、漫画は恋愛ものを多く読んでいたのに、なぜか小説になると一切読もうとしなかったのです。これはいまだに解けない、ある意味私の謎とも言えるかもしれません。
 そんな私が恋愛を主軸とした小説を書くようになったのは、結城光流先生の少年陰陽師シリーズを読んでからです。
 そもそも、この業界、子どもの頃から小説を書いていた、小説を読むのが好きだった、という方が多い印象が(個人的には)あるのですが、私はそのどちらにも当てはまりません。子どもの頃は漫画のほうが好きでしたし、小説を書き始めたのは社会人になってからです。
 淡々と毎日を過ごし、渋々出勤し、とりあえず仕事をして、特に趣味もなく生きていた当時の私は、簡潔かつわかりやすく言ってしまえば、生きる屍でした。
 そんなときに出会ったのが、少年陰陽師シリーズです。これもまた夢中で読み耽りました。
 そしてそのとき、初めて「自分もこんな物語を書いてみたい」と強く思ったのです。大げさでなく、私の世界が色づいた瞬間でした。
 それからは、とにかく「書く」ことに夢中になりました。仕事が休みの日は、朝から晩まで書いていたでしょうか。それこそ寝食を忘れて……とまでは言いませんが、食は忘れるほどでした。〝おかげ〟なのか〝せい〟なのか、体重が10㎏ほど減ってしまったのは余談です。なお、貧血レベルですので、良い子は絶対にマネしないでください。
 とまあ、そんなことはどうでもよくて。「夢中になれるもの」ができた喜びが、私に〝息〟をさせてくれたのです。
 そしてとんでもなく幸運なことに、私はそのきっかけをくれた小説と同じレーベル様にて出版デビューを飾ることが叶いました。

「何かを始めることに、遅いということはない」
 この言葉は、おそらくこれまで多くの人が発信してきた言葉でしょう。私はこの言葉を、本当にそのとおりだと思いました。私のように、社会人になってから、大人になってから、初めて小説を書いた、もしくは書くという方々に、ぜひとも贈りたい言葉です。
 私は最初、周囲と比べて書き始めたことが遅いことを劣等感として、あるいは焦燥感として抱いていましたが、この業界、結局は書かなければ何も始まりません。一度書き始めたなら、そこに遅い早いは関係なく、書き続けることのほうが大切なのだと気づきました。買わなければ当たらない宝くじ。受けなければ合格しない試験。外れることは、落ちることは、挑戦した勲章でもあるのだと、私は自分を鼓舞し、再度挑戦するための糧としています(いや、でも宝くじは喩えとしてちょっと微妙だったかもしれません……)。

 いずれにせよ、デビューして間もない私は、まだまだ未熟なところが多い若輩者です。今回、このような素晴らしい機会をいただき、日本推理作家協会への加入が叶いましたが、協会員に錚々たるお名前が並んでいるのを拝見すると、恐縮の思いでいっぱいにもなります。
 ですが、もっと多くの物語に触れ、エンタメに触れながら、自分なりの物語を紡いでいけたらと思っておりますので、これから何とぞよろしくお願いいたします。