ゴルフ

第40回日本推理作家協会親睦ゴルフ大会

平沼正樹

 またやってしまった―。
 テーブルに置かれた白い紙を見て背筋が凍りつく。
 デジャビュ?
 いや、目の前にある順位表には『第40回 日本推理作家協会親睦ゴルフ大会』と書かれている。そのすぐ下には私の名前。錚々たる参加者の一番上だ。
 嬉しさよりも罪悪感。無事にラウンドを終えて胸を撫で下ろしたのもつかの間、シャワーを浴びたばかりの体はすでに冷え切っている。
 この感覚は昨年味わったものと全く同じものだった。
 そもそも昨年の親睦会は初参加だったため「目立たない」「迷惑をかけない」ことを心掛けて臨んだ。その大会で私は九三という自分でも見たことのないスコアを出してしまう。当然ながらベストスコアだ。
 ラウンド終了後、表彰会場の各テーブルの上に置かれた順位表の一番上には私の名前。冷たい汗が背筋を伝っていた。幸いなことに、初参加者には優勝の権利はないというルールのおかげで私はことなきを得た。
 まさかその翌年に全く同じ体験をするなんて誰が想像できるだろうか。
 しかし今年は初参加ではないし、ハンデを前回よりも一〇減らして大会に臨んだため優勝資格はある。さらには前回幻の優勝者がいたという記憶が皆さまの中にあったようで、同情の声に押されるように受賞が決まってしまう。
 今年こそ「目立たない」「迷惑をかけない」ことを胆に銘じて参加したのだが、一番目立つ結果になってしまった。この際私も覚悟を決め、ありがたくその栄誉を頂くことにした。
 あらためまして、平沼正樹と申します。小さなアニメ制作会社を経営しながら個人でも作品を作る毎日を過ごしております。小説だけではなく映像作品なども手掛けるクリエイターです。私のような者が由緒ある親睦会に参加させて頂けるだけでもありがたいのに、優勝なんてしてしまい恐縮しております。
 参加者の皆さま、そして素敵な親睦会をセッティングして頂いたスタッフの皆さまのおかげで、夢のような時間を過ごすことができました。誠にありがとうございました。