新入会員挨拶
このたび入会させて頂いた、七月隆文と申します。
将棋の同好である和泉桂さまを通じ、葉真中顕さまにお誘い頂きました。
長くこの仕事を続けるうち同業者との交流がどんどんと絞られていた実感があり、とてもありがたかったです。お二方には、心より感謝申し上げます。
皆様方も、これからよろしくお願いいたします。
推理ものとしては『ケーキ王子の名推理』というシリーズを書かせて頂いています。
頂いています、とこの場で堂々と言える推理やトリックなのかと問われるとやや汗顔ではあるのですが、本人としてはがんばっています。
章題に「アイスクリーム」などとスイーツを取り上げ、それに因んだ謎を展開していくというのが基本的な筋なのですが、この謎やトリックをスイーツと絡めなければいけないという縛りが私にとってはかなりきつく、いつも「スイーツの謎ってなんだよ!」と自分でツッコミを入れながら書いています。正直に告白しますと、一冊の四~五章すべてを謎で埋めることは難しく半分くらいは「そのスイーツをテーマにした話」というふうにお茶を濁してしまっている状況です。面目次第もありません。
しかし読者の感想を見ていると、ひねり出したトリックよりもヒロインと王子の恋愛模様に主眼が置かれているのが多数で、作品のジャンルがそもそもそうであり「だよなぁ」と附に落としています。かといって、すべてを放棄すれば読者は静かに去っていくという気もしています。
実を言うと、この日本推理作家協会にお誘い頂いたことが数年前にもありました。
出版社のパーティーで尊敬する石田衣良さまにご挨拶したさいに「よかったらどうですか?」という感じで仰って頂いたのです。
ただそのとき私はあまりに緊張していて、突然のことでもあり、うまく返すことができませんでした。戸惑いを察した石田さまが「まあ、選挙の票数えとか大変なんだよな」と、話を収められました。
あの瞬間のことを今でも覚えていて、ずっと心残りでした。
また縁あって入会することができたので、もし交流会などで再びお目にかかれたときは、改めてご挨拶したいと思っています。