新入会員挨拶
このたび、日本推理作家協会の末席に加えていただくことになりました藤川よつ葉と申します。
入会にあたってお力添えをいただきました西上心太先生と細谷正充先生、そして鳴神響一先生には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。
さて、私は「推理」・「作家」協会の末席に加えていただいたにも関わらず、小説家ではなくマンガ原作者で、集英社ヤングジャンプなど、青年誌を中心に連載をしております。……と、ちゃんと活動していますよ!と、アピールしたくなってしまうのは、協会に加わったというより潜り込んでしまったのではないかという不安の裏返しかもしれません。
そんな私ですが、活字を愛し、そしてそれを表現する策としてマンガを選び、望んでマンガ原作者としてデビューしました。ここで、挨拶がてら私のデビューのきっかけを語らせていただきます。
私の母親は大の本好きで、母のデスクには推理小説から哲学書、エッセイ、マンガに至るまで、さまざまなジャンルの本がずらりと並んでおりました。そんなものが目の前にあるのですから、はじから読むのは必然。幼少期はそのデスク周りを根城にしていたので、今もあのデスクの木の匂いと紙の手触りを瞬時に思い出せるほどです。そしてそんな母の影響を受け、私も「字があると読まずにはいられない、読むものを探さないではいられない」という〝字〟中毒者の道を辿ります。
しかし、大人になり進んだのはマンガも小説も関係ない世界。でも相変わらず本は好きで、読書を一番の趣味として暮らしていたある日、「私は読み手ではなく、書き手になることは出来るのだろうかと……?」と疑問を抱きます。そしてそれを検証すべく、恐々と書き始めると、なんだかそれらしいものが出来上がり、そのまま完成の勢いで、家にあったマンガ雑誌の裏面を見、〝持ち込み〟の電話をかけ、マンガ編集部に足を踏み入れ……ましたが、普通の人間にドラマは起きない。「受け取って編集部で拝見します」という一言で私は帰宅し、やっぱり現実なんてこんなもの、と日常生活に戻ったのです。が……。なんと1週間後、いきなり「アレを連載します」と連絡が来たのです。そこから驚く間もなく掲載が決まり、マンガ原作者と名乗ることになります。そう、私はこの令和の時代に、マンガ界でも小説界でも絶滅しかけのクラシカルな方法で、デビューにこぎつけたのです。
そんな偶然の女神に拾ってもらった私ですが、偶然の女神はもう一度偶然を起こします。ごくライトなタッチではありますが、大好きだけど縁のなかった、いや持とうとも思わなかった「ミステリー」というマンガジャンルに挑戦することが決まったのです。
果たして私にミステリーは書けるのか……? そこは読者(?)への挑戦状とさせていただきたく思います。
とんでもなく未熟者で、作家らしさのかけらもない私ですが、これからよろしくお願いいたします。