新入会員挨拶
このたび、新しく入会させていただきました青木知己です。
十年に一度くらいしか本を出さない寡作・遅筆の私ですが、過分なご厚情を賜り、入会をご承認いただけました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
少年時代から創作まがいのことは多少しておりましたが、親しい友人たちに面白がって読んでもらうだけで満足しており、まさか自分が将来作家のはしくれになろうとは夢にも思っていませんでした。
読んできた本の数も、書いてきた作品の数も、とても語れないお恥ずかしいレベルで、そんな私が商業出版する機会を得られたことは、本当に幸運だったと感じています。
きっかけは、二階堂黎人先生ご監修の『新・本格推理』に短編「Y駅発深夜バス」を拾っていただいたことです。
当時私は、教員から出版社に転職したばかりでした。先輩の社員にミステリー好きの方がいらして、同胞を飲み会に誘っては、宿題として問題編を書かせたり、それを推理させたりしていたのです。そんな席に、ミステリ研に所属したこともない私が、ミステリーの作法もよくわからないまま提出した作品が「Y駅発深夜バス」でした。
『本格推理』『新・本格推理』は読者としてはずっと愛読していたので、ちょうど分量もあてはまるし、力試しに応募してみようかと挑戦したところ、幸いにも入選の運びとなりました。
この作品が、後に日本推理作家協会編『ザ・ベストミステリーズ 推理小説年鑑』に収録していただけることとなり、その後、『本格ミステリ 本格短編ベスト・セレクション』にも収録され、短編集発刊の際には表題作となって、現在に至っています。ですので、この作品を応募していなければ、おそらく自分の作品が活字になることも、当然こちらの会に加えていただくこともありませんでした。
そんな私が、あえてこのたび、入会の希望を出させていただきましたのには、大きく二つの理由があります。
一つは、日本推理作家協会に深い思い入れがあることです。
特別たくさんのミステリーを読み込んだわけでもない私にとって、一番よく読んできたミステリーを挙げろと言われれば、文庫版の日本推理作家協会編『ミステリー傑作選』を挙げます。長編小説よりも短編小説が好きな私には、切れ味鋭い傑作短編が集まったこのシリーズは、バイブルのような本でした。新しい年度のものが発刊されるとすぐに購入し、気に入った作品があれば、その作者の方の長編を読んでみるというような、指南書のような役割も果たしてくれました。
ですから、「Y駅発深夜バス」がその一作品として収録していただけるとわかったときの喜びは、たとえようがありません。本当に夢のようでした。(それ以降、収録していただけるような作品を世に出せていないので、未だにデビュー作を超えられずにいます……)
そんな幸せを与えてくれたシリーズの選者である日本推理作家協会に、何か恩返し──というのはおこがましいですが、関わりを持つことができればと思った次第です。
もう一つの理由は、自分の創作活動への動機付けです。
私は本業は会社員なのですが、ちょうど短編集の『Y駅発深夜バス』が発刊された年から、会社で新規のプロジェクトを任されました。それ以来一気に仕事が忙しくなり、ほとんど執筆に時間を割くことができなくなってしまいました。
このままだと、仕事に忙殺されて二度と本を出せないかもしれないという危機感もあり、創作活動を続ける気持ちを絶やさないためにも、このたび入会を決意しました。
ミステリーに関する知識も技量も皆さんには全然追いつけていない私ですが、少しでも業界の発展に貢献できればと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
十年に一度くらいしか本を出さない寡作・遅筆の私ですが、過分なご厚情を賜り、入会をご承認いただけました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
少年時代から創作まがいのことは多少しておりましたが、親しい友人たちに面白がって読んでもらうだけで満足しており、まさか自分が将来作家のはしくれになろうとは夢にも思っていませんでした。
読んできた本の数も、書いてきた作品の数も、とても語れないお恥ずかしいレベルで、そんな私が商業出版する機会を得られたことは、本当に幸運だったと感じています。
きっかけは、二階堂黎人先生ご監修の『新・本格推理』に短編「Y駅発深夜バス」を拾っていただいたことです。
当時私は、教員から出版社に転職したばかりでした。先輩の社員にミステリー好きの方がいらして、同胞を飲み会に誘っては、宿題として問題編を書かせたり、それを推理させたりしていたのです。そんな席に、ミステリ研に所属したこともない私が、ミステリーの作法もよくわからないまま提出した作品が「Y駅発深夜バス」でした。
『本格推理』『新・本格推理』は読者としてはずっと愛読していたので、ちょうど分量もあてはまるし、力試しに応募してみようかと挑戦したところ、幸いにも入選の運びとなりました。
この作品が、後に日本推理作家協会編『ザ・ベストミステリーズ 推理小説年鑑』に収録していただけることとなり、その後、『本格ミステリ 本格短編ベスト・セレクション』にも収録され、短編集発刊の際には表題作となって、現在に至っています。ですので、この作品を応募していなければ、おそらく自分の作品が活字になることも、当然こちらの会に加えていただくこともありませんでした。
そんな私が、あえてこのたび、入会の希望を出させていただきましたのには、大きく二つの理由があります。
一つは、日本推理作家協会に深い思い入れがあることです。
特別たくさんのミステリーを読み込んだわけでもない私にとって、一番よく読んできたミステリーを挙げろと言われれば、文庫版の日本推理作家協会編『ミステリー傑作選』を挙げます。長編小説よりも短編小説が好きな私には、切れ味鋭い傑作短編が集まったこのシリーズは、バイブルのような本でした。新しい年度のものが発刊されるとすぐに購入し、気に入った作品があれば、その作者の方の長編を読んでみるというような、指南書のような役割も果たしてくれました。
ですから、「Y駅発深夜バス」がその一作品として収録していただけるとわかったときの喜びは、たとえようがありません。本当に夢のようでした。(それ以降、収録していただけるような作品を世に出せていないので、未だにデビュー作を超えられずにいます……)
そんな幸せを与えてくれたシリーズの選者である日本推理作家協会に、何か恩返し──というのはおこがましいですが、関わりを持つことができればと思った次第です。
もう一つの理由は、自分の創作活動への動機付けです。
私は本業は会社員なのですが、ちょうど短編集の『Y駅発深夜バス』が発刊された年から、会社で新規のプロジェクトを任されました。それ以来一気に仕事が忙しくなり、ほとんど執筆に時間を割くことができなくなってしまいました。
このままだと、仕事に忙殺されて二度と本を出せないかもしれないという危機感もあり、創作活動を続ける気持ちを絶やさないためにも、このたび入会を決意しました。
ミステリーに関する知識も技量も皆さんには全然追いつけていない私ですが、少しでも業界の発展に貢献できればと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。