新入会員挨拶
皆様はじめまして。この度、伝統ある日本推理作家協会の末席に加えていただくことになりました飯田実樹と申します。
入会にあたってお力添えをいただきました佐藤青南先生と和泉桂先生には、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。
さて、新入会員挨拶を書くにあたり、皆様がどのように書かれているのか、いただいた会報に目を通したのですが、読めば読むほど私には面白い文章を書ける気がしない……いえ、別に挨拶文なのですから、面白く書く必要はないとは思うのですが、会報に掲載される以上は、もしかしたら憧れの先生方に読んでいただけるかもしれないし、それならばたとえ退屈な他人の自己紹介であったとしても、読むに堪える文章でないといけないのではないか? 多少は面白くないといけないのではないか?などと考え始めると、一行も書けなくなってしまったので、もう色々と悩むのは止めて退屈な定型文のような自己紹介をさせていただきます。
代表作は『空に響くは竜の歌声』(リブレ)ファンタジーのボーイズラブ小説です。
デビューして七年目。まだよちよち歩きのハナタレ小僧です。
九州の真ん中、熊本県熊本市で、普通のサラリーマン家庭に生まれました。母親が教育熱心だったのか、物心ついた頃から名作と呼ばれる本を買い与えられ、小学校に上がると毎年学校指定図書を買ってくれていました。読み聞かせなどはしてもらった記憶はなく、与えられた本を黙々と自力で読む素直な子供だったと思います。おかげで三年生になる頃には、お年玉はすべて本に消えていました。
好きだった本は、『椋鳩十全集』『シートン動物記』『ドリトル先生航海記』などで、動物ものが好きでした。小学校高学年になると、『怪人二十面相』や『シャーロック・ホームズの冒険』など推理小説にはまっていきます。特にホームズは大好きで、どれくらい大好きかというと、二十五歳の時にベイカー街221Bに行くためだけにイギリス旅行をしたほどです。
そして中学一年生の時に、生まれて初めて書いた小説が、名探偵ものでした。そうは言っても、犯罪のからくりや推理の仕方など、どれもどこかで読んだような……というかなり怪しい作品でしたが、推理小説に詳しくない友人たちからは「すごく面白い!」と褒められて調子に乗っていました。
じゃあそれがきっかけで小説を書き始めたのか? と、いうと実はそういうわけではなく、すぐに書くのをやめてしまいました。模倣ばかりではそう何作も書けなかったのでしょうね。
では本格的に小説を書き始めたのはいつからかというと、二〇〇〇年になりインターネットが普及して、「個人サイト」というものが流行りだしました。その時に、私は自分のサイトを作って小説を発表したのです。最初に書いた作品は、サラリーマンの恋愛を書いたボーイズラブ小説でした。
それから毎日百人ほどの来訪者を相手に、細々とサイトに小説を掲載し続けて、三年目の年に異世界トリップのファンタジー小説『空に響くは竜の歌声』を連載しました。これが口コミで人気が広がり、一日一万人の来訪者が来るほどになり、当時はBLでファンタジーを書いた作品は少なく、BLのweb小説でファンタジーと言えば、この作品名が上げられるほどでした。
あれ? 推理小説好きじゃなかったっけ? と、ここで突っ込みを入れられそうですが、実は私……中学二年生の時に、『指輪物語』にドはまりしてしまい、『モモ』『はてしない物語』『ナルニア国物語』などを読みふけり、高校生になると『グイン・サーガ』に傾倒しました。
そういう訳で、かつて怪しげなパクり……いや、インスパイアされた推理小説を書いていた少女が、ボーイズラブ世界のファンタジージャンルで開花したわけですが、実際にデビューしたのは十年以上後の話です。
残念なことに当時のBL出版界では、ファンタジーは受け入れてもらえなかったのです。でも十数年経って時代はやがてファンタジーブームになり、かつて私の個人サイトで『空に響くは竜の歌声』にはまっていた一読者の方がドラマCDにしてくださり、別の一読者の方が書籍化してくださいました。読者様様です。
気が付いたら自分語りがだらだらと長くなってしまいました。本当は趣味である「城巡り」について語りたかったのですが、お城の話を始めるとたぶん会報一冊分くらい書いてしまいそうなので自重いたします。
綺麗な締め方が出来ないので唐突に締めさせていただきますが、日本推理作家協会の一員になることが出来て、かなり浮かれている未熟者です。どうぞよろしくお願いいたします。