土曜サロン

十一月〝水曜サロン〟と十二月の土曜サロン報告
―YOUCHANさんをお迎えして

芦辺拓

 二〇二四年の掉尾を飾る土曜サロンはいささか変則的な形となりまして、まず十一月は六日の水曜日に開かれ、土曜ならぬ〝水曜サロン〟となったうえ、立教大学で開かれた筆者の講演「大乱歩の脳内に分け入る『乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび』はこうして書かれた」との合体企画となりました。日ごろサロン運営に尽瘁する方々を考慮した提案でしたが、会員のみなさんも多数来聴いただき、特別出張版としての役割を果たすことができたようでした。なお、講演会主催者の同大学・江戸川乱歩記念大衆文化研究センターからは推協よりの参加希望者に優先席を用意していただきました。
 続く十二月十四日の土曜サロンは、このところ定着した青山生涯学習館を離れて、新橋駅近くの「生涯学習センター〈ばるーん〉」(旧・桜田小学校)にイラストレーターのYOUCHANさんをお招きし、「探偵小説の装画を描く」をテーマにお話をうかがいました。
 夢野久作が好きで、勝手にカバーを描き、それらの個展の案内を送ったところ早川書房から声がかかり、さらにワールドコン横浜への参加をきっかけにSFの仕事を手がけられるようになったそうですが、今やその画風がミステリの世界でもおなじみとなっているのは、ご存じの通りでしょう。
 何とも温かでユーモラス、しかし作品の性格やディテールを鋭くとらえる作品はどのように生まれるのか。依頼からどのように構想を立て、ラフを描き、担当者とのやりとりを経て納品するのか。今回は特に堂場瞬一氏『ポップ・フィクション』のカバー装画を例に、いったん出た色校を紙質との兼ね合いでやり直すに至るまでのプロセスを見せていただき、作家にとって自著の〝顔〟となるべきものが、どのように創り出されるかを知る機会となりました。