将棋同好会職団戦参加報告
去る5月5日、アリーナ立川立飛にて開催された職域団体対抗将棋大会─いわゆる「職団戦」に参加した。
企業・団体が集い5人一組のチーム戦を行うこの大会に我ら推協将棋同好会が参加するのは今回で2度目となる。
チームメンバーは橋本長道、葉真中顕、西上心太、小前亮、七月隆文、そしてサポートの和泉桂という布陣。
ららぽーとの向かいにある立飛アリーナは、開始前から大勢の人で賑わっていた。メインアリーナだけでは収まらず、隣接するサブ会場も用いられるほどの参加人数。前回の東京体育館でも感じたが、これほど多くの人間が将棋を指しに来ている、という事実に圧倒された。
職団戦は強さによってSからFまでのクラス分けがあり、それぞれのトーナメントで頂点を目指す。初回はFクラスからスタートし、勝ち残れば次回からEに昇格という成り上がりシステムだ。少年漫画的で熱い。
我ら推協チームはFランのエンジョイ勢である。いつかはSに、などという思いは露もなく「終わったあとの飲み会が本番」というモティベーションを持つ。
だが、だからこそ我らは、たったひとつ抱いている不安があった。
それは「2回戦で負けたらどうしよう」ということだ。
初戦ではない。説明しよう。
初戦で敗退したチームは、『慰安戦』に行けるのだ。
これは初戦敗退チームを集めて組まれる新たなトーナメント戦。つまり、もう1回遊べるドン(太鼓の達人)ということだ。
前の初参加、推協チームは2回戦で負けた。これは最悪だった。
大会は朝10時に始まり、1局およそ50分。それが2回で終了。慰安戦の出場権もなし。
おわかりだろうか。会場を出たのはランチタイム。我々は開いている飲み屋を求めて千駄ヶ谷から代々木までを彷徨い歩くこととなった。
どうにかみつかった店で打ち上げをしたが、とにかく全体的にあっという間で、美味しい菓子パンを1個だけ食べたような物足りなさが残った日でもあった。
対局でも大きな反省点があった。先鋒から大将までの並び順である。
各チーム5名が同時にぶつかり、白星3つで勝利。つまり誰をどこにぶつけてより多くの星を取るかという手札の配置が非常に重要となる。
前回の我々は、ピュアに実力順で並べてしまった。結果、うちの大エースである元奨励会の橋本氏に相手の最弱をぶつけられた。
やられた。こちらのエースを事実上封じ込め、残りの強いメンバーで星を取る戦略を実行されてしまったのだ。
だから今回は、こちらもその戦略を採った。
級位者の私と小前氏を大将・副将に据えた。向こうがエース格なら封じ込めることができるし、弱ければワンチャン勝てる。どっちに転んでも損をしにくい。そしてエースの橋本氏と、つよつよな葉真中氏、西上氏に勝ち星を稼いでもらう。
なかなかいいのでは、と思った。3つ取れば勝ちなのだ。
かくして─推協チーム2度目の職団戦が始まった。
戦略がどれほど効いたかはわからない。対局後に相手と答え合わせをしたのだが、1軍から5軍まで参加しているような強豪はそれぞれのチームが均質化しているし(盲点だった)、対局ごとに乱数表を用いて並びを決めているチームもあった。そう上手くはいかないものだ。
だがこの日は、うちのエースとつよつよメンバーが躍動した。鬼門である2回戦を突破し、3回戦に進出。
それを果たしたことで、初めて大会の昼休みを経験できた。ゴールデンウィークで賑わうららぽーとでパンを買い、戻って食べた。
すると……妙に会場の見晴らしがよくなっている。明らかに人が少ない。
昼食に出ていることもあるだろう。けれど、本戦も慰安戦も終えたチームはすでに会場を去った。だからだ。
勝ち進んだんだ─という実感がこみ上げた。
うれしくなって、トーナメント表の写真を撮った。日本推理作家協会の名が階梯を上り、見やすい高みにいた。
ベスト8。
そこで、今回の職団戦は終わった。
2対2となり、残る西上氏の対局で決まる状況。みんなで見守った。すでに最終盤。西上氏は─もう勝ち目がない。
だが粘った、粘った、この一局は最後まで諦めるわけにはいかないのだという、執念がほとばしった。我々の胸に響いた。
会場を出ると夕刻で、立川駅前ですんなりと居酒屋がみつかった。
今日は大会に出た実感があったね、とみんなが言った。真昼に終わってしまった前回とは違う充実の気配が共有されていた。
将棋大会はいい。チームで勝つことのうれしさ、目の前の相手と競うやり直しがきかない緊張。どちらも執筆では体験できないものだ。
最後に、葉真中氏から必ず皆さんに伝えてほしいと言付かったメッセージをもって結びたいと思う。
将棋同好会は絶賛メンバー募集中。未経験者大歓迎!