新入会員紹介

「回答者」から「出題者」へ

竹吉優輔

 はじめまして。竹吉優輔と申します。
 この度、推理作家協会に新会員として加入致しました。以後、お見知りおきのほどをよろしくお願い致します。
 私は、ミステリを愛しております。私にとってミステリは、物心ついた時から傍にいる、家族のような存在です。
 少年期はワトソンと共にシャーロック・ホームズの推理を心待ちにし、明智小五郎に可愛がられる小林少年に対し、自分ならもっと上手くやると嫉妬を抱き、金田一耕助にじらされることに快感を覚えるという、ミステリ好きの誰もが通る道を歩んで参りました。
 何故これほどまでに強くミステリに惹かれるのか。書く側に周ったことによって、ようやくその答えが見えた気がします。
 ミステリは、知的遊戯としてのみではなく、読者との究極のコミュニケーションだと思います。謎は、「回答者」がいなければ意味がなく、私は数々のミステリを通じて、「出題者」である作者がちりばめたヒントを「回答者」として追い、その答えを求め続けていました。それは一つの対話であり、私は幼い頃から読書を通じて、諸先輩方と対話をしてきた、そういった自負があります。
 ミステリは、「回答者」である読者がいなければ成り立たず、読者を貪欲に求めるジャンルだと感じております。
 私は長年の夢であった、「回答者」から「出題者」になることができました。そして、今まさに出題することが如何に難しいかを実感しております。私が過去出会った、軽やかに私を背負い投げしてきたミステリ作品が、どれだけの苦悩の果てに生まれたものだったのかを思い、途方もない感動に浸っております。
 今は未熟者として、ミステリを我を忘れて謎を追い、解決編において鮮やかな真相に呆気に取られ、その美事な真相に拍手喝采をするという作品には未だほど遠いのですが、今後、必ず進化を遂げて、謎を求める読者達の心に届くような会心の一作を世に届けるよう、邁進致します。
 そしてもう一つ、私がミステリを愛してやまない理由があります。ミステリは当然の如く、大半に事件が起きます。人が死ねば哀しみが生まれます。殺人が起こらなくても、謎という不鮮明な存在は登場人物を肉体的にも精神的にも追い込んでいきます。謎や事件という、日常とはかけ離れた異常下で、登場人物はもがき、苦しみ、そして行動を起こします。私はそういった感情の揺れ動きに、一読者として圧倒されるのです。
 私は天才でもなければ秀才でもありません。そんな私が紡ぐ物語は、恐らく、天才的な名探偵というものは登場しないでしょう。突如起こった事件に悩み、苦しみ続ける等身大の主人公が主となるでしょう。ただ、登場人物達が事件に立ち向かい、読者と共に答えを追い求め、不条理な事件や謎に抗い続ける姿だけは一生書いていこうと思います。
 ミステリは、小説という媒体を使った読者との究極のコミュニケーションであり、同時に、人間の心理を深く追求できる不思議なジャンル。これが私が現在思う、ミステリの定義です。
 正しいかどうかはわかりませんが、ひたすらに書き、ひたすらに読み、ひたすらにこの道を進もうと思います。
 僭越ではありますが、推理小説家になった以上、先輩方に「ほう」と思わせる一作を書き続けるつもりです。
 改めて、何卒よろしくお願い致します。