土曜サロン

「新聞書評面の作り方」
読売新聞社東京本社文化部 多葉田聡氏
第192回土曜サロン開催

 新聞の読書欄、書評面を楽しみにされている方は多いと思う。2013年4月から読売新聞読書欄の編集長に就任された読売新聞社東京本社文化部の多葉田聡氏に「書評面の作り方」をうかがった。
 新聞社によって書評面の作り方はさまざまだが、各界の読書人に読書委員、書評委員を委嘱し、日曜日に署名原稿として掲載している。読売新聞社の読書委員は現在二十名(うち二名は読売新聞社編集委員)。例外はあるが基本的に任期は二年である。各社とも委員の独自性を打ち出すのに苦労しているようだ。
 読売新聞社では読書委員会を二週間に一回開き、委員たちに社に集まっていただいている。書評で取り上げる本だが、各出版社からの献本を主に、記者たちが書店をチェック、面白そうな新刊は買い求め、話題作に漏れのないよう注意を払っている。これらの本を会議室のテーブルの上に拡げ、委員たちに選書してもらうのだ。わたしたちが書店で本を選ぶのとあまり変わりはない。その後、各委員が選んだ本を「なぜこの本を取り上げたいと思ったか」を話してもらい、賛同を得られたら執筆していただく。これが基本スタイルである。原則として奥付から三カ月までの新刊を取り上げ、また読書委員の著書は在任中には扱わないことになっている。
 一方、ある新聞社では本のリストを書評委員に送付、チェックをつけられたものを執筆してもらう方法をとっている。多忙な委員たちにとっては効率的でありがたいシステムだが、各委員同士が顔を合わせ親睦を深める機会がないのがさびしい。
 本の出逢いと一緒だが、書店で棚を眺めていると、目的の一冊ばかりでなく、思いもしなかった本に興味を惹かれることがある。一概にどちらがいいと判断できないが、目的の本を探すのにインターネットは便利な方法だが、結果優先、効率優先だけでは見えてこないものもあるだろう。
 読売新聞では夕食をとりながらの委員会のあと、二次会、三次会まで委員たちが集うこともあり、そこから委員同士の交流が生まれ、企画が誕生したり、さらには新聞社の他の部署にまで有形無形のフィードバックがあらわれることがある。かなりアナログかつ、非効率的な(?)やり方かもしれないが、これもひとつの方法ではあるだろう。
 新刊書店の減少や、若い人の読書離れが話題になる昨今、新刊の紹介ばかりでなく、旧刊書をどう取り上げていくか、またライトノベルなどを扱ってゆくのか、さらには電子書籍の書評をどうするかなど、時代の変遷とともに課題は尽きない。
 多葉田さんは学生時代、映画に熱中され、文化部記者としては長年、演劇方面を担当されてきた。「書評面を受け持つようになってまだ日が浅いので」と謙遜されながら、「でも書評を見て、面白そうだな、読んでみようかな、と読者のみなさんに思ってもらえる紙面づくりを心がけていきたい」と抱負を語られた。
 こちらでは紹介できないナイショのこぼれ話、裏話も多く、本に関しては一家言ある出席者ばかりで、楽しい土曜日の午後でした。

[参加者] 石井春生、加納一朗、新保博久、長谷川卓也、直井明、本多正一(文責)
[オブザーバー] 沢田安史