入会のご挨拶
三沢陽一
はじめまして。このたび日本推理作家協会に入会させて頂きました、三沢陽一と申します。
まずは入会にあたりご協力頂きました、有栖川有栖様、千街晶之様に心よりお礼申し上げます。
わたしは2013年に『致死量未満の殺人』という作品で第三回アガサ・クリスティー賞を受賞し、デビューさせて頂きました。しかし、未だに「作家」と名乗ったことがありません。お店や役所などで職業を訊かれても、「自由業です」と答えますし、名刺の肩書きも「物書き」です。それは自分がまだ「作家」と名乗れるような人間ではないからでしょう。
「いやいや、新人賞を受賞したんだから作家でしょ?」といった意見や「本を出してるんだから作家だよ」という言葉を友人たちからもらうのですが、やはり自分の中でしっくりときません。恐らく、わたしの中の作家像というものと現状が一致していないからだと思います。
総ての作家さんがそうかどうかは判りませんが、担当編集者さんから原稿を催促されたり、読者の皆さんに新作を待ち望まれたり、ファンレターをもらったり、書評などでガンガン紹介されたり……そういうのが作家だと思うのですが、今のところ、わたしはそのどれにも当てはまりません。まあ、これらの例は半分冗談ですけれど。
しかし、やはり「作家」というものは世間的に認知されてようやく「作家」になるのだと思います。なので、わたしは今のところ、せいぜい、「物書き」が相応なのだと思っています。三年後、いや、五年後くらいには正々堂々と「作家」と名乗れるようになっているといいな、なんて思っていますが、どうなることやら。こればっかりはわたしの頑張りと、ミステリの神様のみぞ知る、といったところでしょうか。
ミステリの神様、といえば、皆さんの中には神様的存在の作家さんはいらっしゃると思います。神様、とまではいかなくても、尊敬している作家さんは必ずいますよね。わたしの場合は、連城三紀彦さん、泡坂妻夫さん、山田風太郎さんです。御三方とも残念ながら亡くなられているのでお会いすることができませんが、その方々に少しでも近づけるよう、精進していきたいと思っております。それが「作家」になる近道のような気がしますし、もしかしたら、途方もない道程を歩き始めていて、幻のゴールを目指しているだけに過ぎず、永遠に辿り着けないかもしれません。それは判りませんが、今は霞むほど高い目標に向かって書き続けること。それに尽きると思います。
今のところ、鳴かず飛ばずのしがない作家ですが、声をかけてくださる出版社さんがいらっしゃる限り、僅かでも新作を待ってくれている読者さんがいらっしゃる限り、書きたいものが尽きない限り、懸命に書き続けていきたいと思っている所存です。せっかく日本推理作家協会員になったのですから、それくらい頑張らねばならないと思っています。
たくさんの先輩たちのお言葉通り、この世界は厳しいものでしょう。五年後の生存率は数パーセントだとも聞いています。大変な道を歩き始めてしまったな、と蒼褪めながらも、それはやはり幸せなことであり、「物書き」としてスタートし、こうして日本推理作家協会に入会させて頂き、高い目標に向かって歩き始めることができたのは嬉しいです。わたしは心が豆腐よりも脆いので、簡単に凹んだり挫ける人間です。そんなときは叱咤してくださるとありがたいですし、「日本推理作家協会の入会の挨拶のときにああ云ってたじゃないか」と厳しく声をかけてくださると幸いです。そうでもしないといつまでも「物書き」から脱することはできませんから。
一作一作が勝負――。最新作が最高傑作――。そして、いつも遠い目標に向かう過程だと思うこと――。「作家」という職業はそういうものだと思っています。上述した尊敬する三人の作家さんもそうでした。それを目指して努力を重ねていきますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
まずは入会にあたりご協力頂きました、有栖川有栖様、千街晶之様に心よりお礼申し上げます。
わたしは2013年に『致死量未満の殺人』という作品で第三回アガサ・クリスティー賞を受賞し、デビューさせて頂きました。しかし、未だに「作家」と名乗ったことがありません。お店や役所などで職業を訊かれても、「自由業です」と答えますし、名刺の肩書きも「物書き」です。それは自分がまだ「作家」と名乗れるような人間ではないからでしょう。
「いやいや、新人賞を受賞したんだから作家でしょ?」といった意見や「本を出してるんだから作家だよ」という言葉を友人たちからもらうのですが、やはり自分の中でしっくりときません。恐らく、わたしの中の作家像というものと現状が一致していないからだと思います。
総ての作家さんがそうかどうかは判りませんが、担当編集者さんから原稿を催促されたり、読者の皆さんに新作を待ち望まれたり、ファンレターをもらったり、書評などでガンガン紹介されたり……そういうのが作家だと思うのですが、今のところ、わたしはそのどれにも当てはまりません。まあ、これらの例は半分冗談ですけれど。
しかし、やはり「作家」というものは世間的に認知されてようやく「作家」になるのだと思います。なので、わたしは今のところ、せいぜい、「物書き」が相応なのだと思っています。三年後、いや、五年後くらいには正々堂々と「作家」と名乗れるようになっているといいな、なんて思っていますが、どうなることやら。こればっかりはわたしの頑張りと、ミステリの神様のみぞ知る、といったところでしょうか。
ミステリの神様、といえば、皆さんの中には神様的存在の作家さんはいらっしゃると思います。神様、とまではいかなくても、尊敬している作家さんは必ずいますよね。わたしの場合は、連城三紀彦さん、泡坂妻夫さん、山田風太郎さんです。御三方とも残念ながら亡くなられているのでお会いすることができませんが、その方々に少しでも近づけるよう、精進していきたいと思っております。それが「作家」になる近道のような気がしますし、もしかしたら、途方もない道程を歩き始めていて、幻のゴールを目指しているだけに過ぎず、永遠に辿り着けないかもしれません。それは判りませんが、今は霞むほど高い目標に向かって書き続けること。それに尽きると思います。
今のところ、鳴かず飛ばずのしがない作家ですが、声をかけてくださる出版社さんがいらっしゃる限り、僅かでも新作を待ってくれている読者さんがいらっしゃる限り、書きたいものが尽きない限り、懸命に書き続けていきたいと思っている所存です。せっかく日本推理作家協会員になったのですから、それくらい頑張らねばならないと思っています。
たくさんの先輩たちのお言葉通り、この世界は厳しいものでしょう。五年後の生存率は数パーセントだとも聞いています。大変な道を歩き始めてしまったな、と蒼褪めながらも、それはやはり幸せなことであり、「物書き」としてスタートし、こうして日本推理作家協会に入会させて頂き、高い目標に向かって歩き始めることができたのは嬉しいです。わたしは心が豆腐よりも脆いので、簡単に凹んだり挫ける人間です。そんなときは叱咤してくださるとありがたいですし、「日本推理作家協会の入会の挨拶のときにああ云ってたじゃないか」と厳しく声をかけてくださると幸いです。そうでもしないといつまでも「物書き」から脱することはできませんから。
一作一作が勝負――。最新作が最高傑作――。そして、いつも遠い目標に向かう過程だと思うこと――。「作家」という職業はそういうものだと思っています。上述した尊敬する三人の作家さんもそうでした。それを目指して努力を重ねていきますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。