新入会員紹介

推理作家協会入会騒動の顛末

高田崇史

 みなさま、はじめまして。高田崇史と申します。この度、ご縁あって日本推理作家協会に入会させていただきました。なにとぞよろしくお願い致します。

 十八年前に講談社の「メフィスト賞」という一風変わった賞を受賞し『QED 百人一首の呪』という作品によってデビューさせていただいたのですが、この賞の受賞者には年に一回「メフィスト賞同窓会」という、これまた変わった集まりが用意されています。ある時、その集まりの中で推理作家協会の話が出て、ぼくはまだ何となく入会していないなどという流れになり、皆さんに驚かれました。しかしそれは、ただ単に縁がなく(ぼくは、文学界でもその他の場でも極端に友人が少ないので)十八年も経ってしまったという話を黒田研二さんと交わしました。
(しかしその時、黒田さんはかなり酔っ払っておられたため殆ど記憶にないかとも思われますが、お話しました)
 家に帰って、そんな話を妻に伝えると、いつまでも薬剤師会員だなどと言っていないで、きちんと足元を固めたら(?)どうかとたしなめられ、またちょうどぼくも(おそらく相手の東京都薬剤師会も)何となく中途半端な状況だと感じていたのでした。
 そこで一念発起して、同じ沿線六つ隣の駅に住んでおられる霧舎巧さんに、健康保険その他のことも含めて非常に現実的なご相談をしました。そしてお話を伺った結果、やはりこの機会に、きちんと入会させていただこうと決心しました。その際、一般会員の推薦人は霧舎さんに引き受けていただけたのですが、しかしその他にも、協会理事の方の推薦が必要ですといわれました。
 さて、困った。
 今も述べましたように、ぼくは作家さんの知り合いが殆どいないため、どなたが協会の理事さんなのか、また果たしてその方がぼくを推薦していただけるのか全く想像もつきません。そこで、デビュー当時からお世話になっている講談社のK木さんにお訊きすると、何と「メフィスト賞・第零回受賞者」である京極夏彦さんが理事さんなのではないか、と言われたのです。
いや、京極さんならば、この間のメフィスト賞同窓会でも隣の席でお話ししたし、講演会にも二度伺っているし、ファンとして何冊もの本にサインをいただいている。もしかしたら……。
 そう考えて、ここは「困った時の京極さん」ということで、すぐに連絡を入れさせてもらうと、その数日後にご本人から折り返しの電話があり、快く推薦を引き受けていただくことができました。しかも、
「本日なのですが、これから四時間十五分後に理事会があるので、それまでに申し込み手続きが間に合っていれば、今月入会の可能性はあります。しかし間に合わなければ、今から一ヶ月後での審査になります」
 とおっしゃられたのです。
 これは絶対「運命」に違いないと感じたぼくは、
「ぜひ、よろしくお願いします」
 とお答えしました。すると、そんな我が儘に京極さんは、親切にもすぐさま事務局の小池さんという女性の方に「可及的速やかに」と連絡を入れていただいたようで、小池さんからも電話で「今から三時間以内に申し込みを完了させてくださいねー」と(とても楽しそうに)言われました。
 そこでぼくは、大慌てで入会の手続きをさせていただくことになったのですが、それからというものは、よくあるマンガのようにメールをしながら電話をかけたり、時計を睨みながらパソコン画面と格闘したりと、まるでリアル「ダン・ブラウン」の世界でした。おかげで手続きが終わった時には、締め切りを何とか無事にクリアした時のような不思議な達成感に襲われました。
 またその日、全く違う用事で講談社のK城さんと電話でお話しをしていると、実は今私は推理作家協会の新年会に出席していますとおっしゃって、その場にいらっしゃった京極さんに電話口で「無事、理事会で承認されました」という連絡をもらうことができ、ホッと安堵して、ぼくの長い半日が終わったのでした。
今回ご尽力いただきました全ての皆さまには、この場をお借りして心より御礼申し上げます。しかしこの度の事例は、あくまでも理事の京極さん、及び事務局の小池さんの多大なるご苦労に負う所のものでしたので、良い子の皆さんは決して真似をしないようにと伝えます(誰に)
 そしてふと気がつくと、今回の入会騒動は黒田研二さんから始まって、霧舎巧さん、京極夏彦さん、小池さん、講談社のK木さん、K城さんと、見事に頭文字が全て「K」の方々にお世話になっていたのですが、これも何かのご縁なのでしょうか……。
 ということで、入会挨拶に必須であるこれからの自作に関しての抱負や展望、また将来の夢や願望などを具体的に書き記すスペースもなくなってしまいましたが、執筆のテーマとしましては今まで同様に相変わらず「History is Mystery」ということで、日本の歴史に関する怪しげなミステリを書き続けていきたいと愚考しております。
 こんな私ですが、改めましてこれから先、よろしくお願い申し上げます。