新入会員挨拶
初めてご挨拶いたします。この度、日本推理作家協会の末席に加えていただくことになりました、飛野猶と申します。
入会にあたりましてご推薦くださった佐藤青南先生と和泉桂先生、そして事務局や理事会の皆様へ、この場を借りて篤くお礼申し上げます。
私のデビューは2018年冬でして、KADOKAWAが運営する無料小説投稿サイト『カクヨム』で開催されておりました、第三回カクヨムWeb小説コンテストで特別賞を受賞しての書籍化でした。
それ以来、男性向けの異世界ファンタジーや、女性向けの異世界恋愛もの、キャラクター文芸、溺愛恋愛ものなど気の向くままにライトノベル系の様々なジャンルの本を出してきました。
出版した本も十冊を超えたので、そろそろ何かしら自分の創作の軸になるものがほしいと思いはじめてきたのが去年頃のことです。ホラー小説や警察小説の方向性も面白そうだなと読み漁り、自分でも書いてみたりしはじめたところ、あれ? どちらのジャンルも推理小説の素養がないと難しいのでは……?とようやく気付き、そこでハタといままで推理小説というものから逃げ続けてきたことに思い至りました。
恥ずかしながら推理小説に対して、なんだか難しそうというイメージが先行していままで避けてきたことに気づいたんです。
そもそもなぜ推理小説を難しいものだと思い始めてしまったのか。
思い返してみれば、それは小学生のころにさかのぼります。小学生高学年のとき、私は休み時間になるとよく学校の図書室に行っていました。借りていた本はもっぱら小学生向けのオカルト本でした。世界中のオカルト話を集めた、紫の表紙に黒猫の書かれたシリーズが大好きで、それをよく読んでいたように思います(タイトルは失念してしまいました……) ところで、図書室ではクラスの男子たちの姿もよくみかけました。男子たちがきゃっきゃうふふとしながら楽しそうに本棚から本を選んで借りていきます。彼らが読んでいたものこそ、江戸川乱歩先生の少年探偵シリーズでした。男子たちが楽しそうに何冊も借りていく、劇画タッチの表紙。気になって仕方なかったのですが、少年探偵シリーズの周りにはいつも男子たちがたむろしていたので引っ込み思案な私は近寄れませんでした。しかも借りていく男子たちは主にクラスの頭のいい子たちばかり。そんな子たちが夢中になる本に私自身も密かな憧れを抱きながらも、なかなか近寄ることができないでいるうちに、やがて「あの本は頭のいい子しか読めない難しい本なんだ」と思い込むようになっていきました。
思えばあのときの擦りこみが、いまもうっすらと私の意識を支配していて、推理小説に距離を置いてしまった要因になったように思えてなりません。
だけど、これではいかん! と思いたち、それならこれから推理小説を知ろう!それにはどうすればいいだろう……と、悩んだ末、そうだ、推理小説家の皆様がたくさんいらっしゃる場に身を置けば、今のトレンドや話題作も自然と知れるだろう。そもそももう逃げることもできなくなるぞ!という背水の陣を敷くために、日本推理作家協会様への入会を希望した次第です。
こんな不純(?)な動悸にもかかわらず、門外漢である私をあたたかく迎いいれてくださる日本推理作家協会様の懐の大きさに感謝するとともに、協会員の名に恥じないようにこれからは推理小説としっかり向き合っていきたいと決意を新たに頑張っていく所存です。
未熟者ですが、何卒よろしくお願いいたします。