新入会員紹介

「元CA」以外の強みも

蒼井凜花

 はじめまして。入会させていただくことになりました蒼井凜花と申します。
 まずは、ご推薦いただきました真保裕一様、鈴木輝一郎様に、心より御礼申しあげます。
 CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママ――私の歩んできた道です。
 文学とは無縁だった私が小説を書こうと思ったのは、「夜の世界からの脱却」に他なりません。
 金と欲が渦巻く夜の世界は、言葉を換えれば、嘘と嫉妬と虚飾の世界。
 同じ接客業でも、CAとは正反対の色恋メイン。
 女は若さと美貌を武器に男にすり寄り、男はそんな心の内を見透かして、若い肉体を提供しろと言わんばかりに大金をばら撒く。
 駆け引きと疑似恋愛に加え、「自己演出」という耳触りのいい嘘で塗り固めた日々に不安を抱き始めた二〇〇八年――ママ業について、すでに八年が経過していました。
 何かを残したい。老いても持続可能な仕事はないだろうかとネットで検索。ヒットしたのが「サンスポ官能小説講座」でした。
 さっそく休日に一人で受講し、平日は店が終わる夜中の三時すぎ(アフターがある日は帰宅後)から執筆し、早朝に寝る生活が始まりました。
 翌日は昼過ぎに起き、お客様への営業電話やお礼状書き。作家を目指すのは個人の勝手ですから、店の仕事をおろそかにし、売り上げを下げるわけにはいきませんでした。
 地道な執筆の甲斐があって、「性ノンフィクション大賞」を二年連続で受賞することができました。
 さほど官能に抵抗がなかったのは、クラブの接客で「ワイ談」慣れしていたからでしょうか。
 セックスネタは万国共通、政治・宗教に引っかからず、誰も傷つけない。何より、着地を笑いに持っていける利点があります。
 もう一つ、抵抗のなかった理由に、私の生い立ちがあります。
 両親そろって「旭川市の小学校教員」の一人娘としての生まれた私は、厳格な親のもと、いつも「礼儀正しく、従順な子供」であることを強いられていました。
 親の目、周囲の評判を気にし、思春期に抱く性的好奇心など口にできるはずもなく、抑圧された少女期を過ごしたのです。
 いい娘であらねばいけないと思う反面、淫らな妄想や好奇心が小さな胸の内を満たしていました。
 後ろめたさを感じながら抱く淫靡な空想は、甘く毒々しい魅力に溢れていました。

 作家を目指してから二年後の二〇一〇年、CA官能小説「夜間飛行」でデビュー。
 約二年間は、ママ業と作家の二足わらじでした。二○一二年の「団鬼六賞」でファイナリストとなり、二〇一三年から本格的に作家活動を行っております。

 現在はCAモノの官能小説をメインに書かせていただいておりますが、夜の世界に身を置いた経験を活かした男女の性愛を描いていきたいとも思います。
 自分なりのブルーオーシャンを模索し、何が書けるか? いかに生き残っていくか――?
 そのためには「元CA」以外にも強みを持たねばなりません。

 アンテナを広く張り巡らせ、現状に満足することなく、地道に、そして謙虚に、日々精進してまいります。