新入会員紹介

入会のご挨拶

小野はるか

 このたび、日本推理作家協会の末席に加えていただくことになりました小野はるかと申します。まずは入会に際しましてご協力を賜りました先生方に深く御礼を申しあげます。ご多忙な中、誠にありがとうございました。
 わたしはビーンズ文庫という、いわゆる少女小説のレーベルからデビューをいたしました。それから数年間、扶養範囲内でほそぼそと執筆をつづけて参りましたが、一昨年におなじKADOKAWA内の別レーベルにて賞をいただく機会を得まして、風前の灯であった作家生命をもう幾ばくか延命させていただくことができました。再デビューといってもよいのかもしれません。
 新たに挑戦させていただくことになりましたのは、キャラクター文芸とよばれるジャンルです。ライトノベルのキャラクター性を強く残しつつ、対象読者を広く想定したエンタテイメント小説です(ですよね……?)。
 わたしは読者としましては学生時代に有栖川有栖先生の『月光ゲーム』と出会いまして以来、ミステリが大好物であるのですが、近年はなかなか家事と育児の合間では集中して読書をする時間がとれずにおりました。育児経験のある方でしたらご理解いただけるかと思うのですが、「ママみてー」「ママだっこ」「ママあそぼ」が延々とつづくのです。昼寝した! よし! と勢い込んでコーヒーと本を用意しても、だいたい良いところで子は起きてきます。本を開いた途端に起きたりもいたします。ちょっとまって、今いいところなの! は通じません。しおりは抜かれ、本をしゃぶられ、破られ、消沈します。乳児幼児がいると、伏線を拾って犯人を当てたくても当てられない。集中して読みたくても読めないのです。本格ミステリと本格的に向き合うには、あまりにも自由時間がこま切れにすぎました。
 そういった中、出会ったのがこのキャラクター文芸というジャンルでした。特に楽しませていただいたのが、一話一話が短い連作短編となっているキャラクター・ミステリです。まとまった読書時間がとれなくても、ちょっとした空き時間に手軽に気軽にミステリが楽しめる。ライトなコージーものからなかなか本格的なミステリまであり、感銘を受けました。そして感銘を受けるとそのジャンルで書きたくなるのが作家というもので(?)、公募を経まして、なんとかこうして活動をさせていただけるに至りました。書くぞ書くぞ、と時間の捻出に悪戦苦闘している間にさらに子が増え三人となり、ますます読書時間が圧迫されておりますが、ええと、一日が四十八時間になる日はいつですか……?
 さて、正直なところ、推理作家協会の会員となりましても、いつまでつづけることができるのかはまだまだ不透明な無名作家です。数年に渡って鳴かず飛ばずの扶養作家でありましたので、この業界の厳しさは身を以てよく承知しております。けれども幸いにも書かせていただける立場となれました以上は、わたしのように家事育児の合間にでも、あるいは仕事を終えてコーヒーを飲むほんのひとときでも、就寝前の十分間だけでも、気軽に読んで楽しんでいただけるようなライトなミステリを世に出していきたいと思っております。
 まだまだ未熟者ではございますが、ご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。