新入会員挨拶
初めまして、一ノ瀬千景と申します。この度、伝統ある日本推理作家協会の末席に加えていただくことになりました。入会にあたりご尽力くださいました佐藤青南さま、和泉桂さま、事務局の皆さまにこの場を借りて御礼申しあげます。
さて、ここからは少し自己紹介をさせてください。〝推理作家〟協会に加えていただいた身ではありますが、私自身はミステリーではなくライトノベル・漫画原作の分野で活動をしております。そんなわけなので、入会を認めていただいた現在でも「本当にいいのだろうか……」という後ろめたさのようなものが消えません。
ですが! 読者としてはミステリーを心から愛しております。この点だけは、ぜひともアピールさせてください。
私は物心ついた頃にはすっかり活字中毒になっておりまして……絵本、児童文学、少女小説、漫画、雑誌、新聞、とにかく文字を追うことが大好きでした。初めて触れたミステリーは父の本棚にあった、赤川次郎先生の作品だったと記憶しております。「三毛猫ホームズシリーズ」、「三姉妹探偵団シリーズ」。難しい言葉はわからない当時の私にも読みやすい文章で、とても夢中になりました。当時は少女小説分野でもミステリー作品が数多く刊行されていましたので、それらも片っ端から読み漁っていましたね。秋野ひとみ先生の「つかまえてシリーズ」の大ファンでした。
ハイティーンになる頃には、少し背伸びをして大人向けミステリーも読むようになりました。警察小説や社会派ミステリーも好きですが、どちらかといえばクラシカルな作品が好みです。探偵・クローズドサークル・因習の村・呪われた一族などというキーワードを見かけると、ついつい手が伸びてしまいます! オススメの作品があれば、ぜひぜひ教えてくださいませ。
ミステリーに限らず、歴史小説やファンタジー、ホラーなども大好きです。反面、ビジネス書や自己啓発書などはほとんど読んだことがないので、筋金入りのフィクション好きなのだと思っています。
このように〝読む〟ことは子どもの頃から大好きだったのですが、〝書いてみよう〟という発想には至らないまま大人になりました。
きっと、私にとって「物語」はあまりにも面白く、魅力的だったので、自分にそれが産み出せるとは考えられなかったのだと思います。そんなわけで、書籍とはなんの関連もない業界で会社員となり、結婚をして……創作とは無縁の人生を送っておりました。
そんな私の転機となった出来事が妊娠・出産でした。それまでは外で身体を動かすのが趣味だったのですが、叶わなくなり……新しい趣味として始めてみたのがWEB小説の投稿だったのです。すっかり夢中になり、気がつけばもう十年近く続けております。十年前には、自分の名前が載った小説や漫画を出版できるなどとは夢にも思っていませんでした。
初めて自著が書店に並ぶのを見たときの感動は忘れられません。もう決して若いとはいえない年齢になってから、こんな幸運に恵まれることもあるのですから……人生って素晴らしいですよね!
読む側から書く側になってみた今、あらためて、これまで私を楽しませてくれた小説や漫画、それらの産みの親である先生方への尊敬の念が強くなりました。
活字中毒だった私は分厚い本が大好物で、京極夏彦先生の「姑獲鳥の夏」や恩田陸先生の「黒と茶の幻想」に心を躍らせたものでしたが……今は少し、ほんの少しだけですが、あれだけのページ数の作品を世に出す大変さを理解できたように思うので。まさに偉業だなと感じております!
さて、ただただ読書遍歴を語るだけの挨拶となってしまいましたが、そろそろ締めようかと思います。
作品も私という人間自体もまだまだ未熟ではありますが、私が長い読書歴から得てきた「楽しい、幸せ!」という感情を今度は自分が誰かに与えることができたら……今はそんな気持ちで文字を綴っております。一日でも長く、この日本推理作家協会の会員でいられるようにこれからも精進してまいりたいと思います。