新入会員挨拶
皆様、はじめまして(実はソフトボール大会の記事を書かせていただいているので厳密には違うのですが)。このたび、日本推理作家協会に入会させていただきました陸理明と申します。このペンネームは中学二年生のとき、はじめて創作をした際の主人公につけた名前を何十年もたってから自分の名前に転用したという愛着があるのかないのかわからないもので、「くが みちあき」と読みます。ぜひよろしくお願いいたします。
入会にあたり、私を推薦してくださった河野治彦先生、西上心太先生、大変ありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。
私にとって、日本推理作家協会は崇拝する先生方の著者紹介に必ずプロフィールとして記されている憧れでした。実際、どういう活動をする団体なのかを調べたのは随分あとのことで、作家になったら必ず入らないといけないものだと思い込んでいたほどです。
こんな私が小説を書いてみようと思ったのは、中学一年生のときに友達の兄から借りた朝日ソノラマの「吸血鬼ハンター
〝D〟」を読んだときでした。著者は、菊地秀行先生(私のプロフィールにはお名前を絶対に載せるようにしています)。
まだ少年だった陸理明は「吸血鬼ハンター〝D〟」を読んでまるで頭をぶん殴られたように感じたものでした。
まず、第二章の冒頭から「西暦12090年。」とあって、一桁読み間違えたのかと思ったら実は本当に12000年後の未来の話だったという衝撃から始まり、陰のある謎の美青年(最初は今ほど美しくはなかった)が辺境に住む心優しい姉弟を強大な吸血鬼の貴族から守るために戦うという疾走感のある物語に引き込まれ、あっという間に読み終わりました。
こんなに面白いお話があるんだ、もっともっと読んでみたいと望みました。
それから、菊地先生の既刊をすべて読み漁っても飢えは収まらず、小説と名の付く読み物に片っ端から手を出していきました。もちろん、限界はありましたが、それでも知人に勧められたものや話題作はかなり押さえたと思います。
ジャンルの割合としては、SFが3、ホラーが2、ミステリーが5といったところでしょうか。
残念ながら純文学の素養は磨けなかったので、哀しいことに今でもそっちの分野は疎いままです。
基本的にはやはりエンタメ中心に、当時あまり手に取らなかった文庫(挿絵が少なかったからでしょうか)や高価な本というイメージのハードカバーではなく、各レーベルのノベルズが発売する日にちを覚えて本屋に忘れずに通い詰めたものです。
そう、そうです、ああノベルズ!
上下二段に分かれたあの新書版の書籍が私は大好きでした。
講談社ノベルス、ノン・ノベル、カッパ・ノベルス、トクマ・ノベルズ等々……今でこそメインではなくなってしまい、書店でもあまり扱われることはありませんが、あんなにバランスのいい書籍形式が今では絶滅寸前だなんて信じられません。
京極夏彦先生の「百鬼夜行シリーズ」がズラリと並び、隣に「水晶のピラミッド」があり、「総門谷」「ウロボロスの偽書」「魔王伝」が順番に収められているという節操のない私の書棚ですが、やはりサイズがピタリと揃っているのは気持ちがいいです。
私の夢の一つに日本推理作家協会への入会というものがありましたが(そちらはなんと見事に叶ってしまいました)、それ以外にも「ノベルズ形式での作品」の出版と出来る事なら廃れつつあるノベルズの再興をしたいというのがあります。
版元とか書店側の事情という如何ともしがたいものが多いのでしょうが、そういったものをなんとか乗り越えて、昔の自分をわくわくさせてくれたものを蘇らせてみたいな、と思っています。
そして願わくば、菊地秀行先生の「魔界都市ブルース」の横にひっそりと自作が並んでいるのを見届けることができれば、幸せこれに勝るものはないと言えるでしょう。