名誉会員・和久峻三氏死去
名誉会員の和久峻三氏が十月十日に心不全のため亡くなられた。八十八歳。和久氏(本姓・滝井)は一九三〇年大阪府生まれ。京都大学法学部を卒業し、中部日本新聞社に勤務。一九六一年に退社し、一九六七年に司法試験に合格、その二年後に京都で法律事務所を開業した。
それまでに短編の掲載や入選はあったが、一九七二年に「仮面法廷」で第十八回江戸川乱歩賞を受賞し、本格的な作家生活に入った。一九七六年に柊茂検事が主人公の「疑わしきは罰せよ」が刊行。以後、柊検事ものは「赤かぶ検事」シリーズとして大人気を博した。このシリーズは一九八〇年からフランキー堺主演でテレビドラマ化され、長年に亘って制作、放映された。
裁判調書の形式を用いた「雨月荘殺人事件」(八八年)で第四十二回日本推理作家協会賞を受賞した。
老弁護士・猪狩文助、イソ弁・日下文雄、代言人・落合源太郎など弁護士を主人公にしたシリーズなどもあり、法律家としての知識を活かした法廷ミステリーの分野で異彩を放った。
冒険小説やハイテクサスペンスなど法廷もの以外のジャンルも多く手がけ、作品数は二百冊を超える。また法律関係のエッセイや啓蒙書の著作も多い。