2009年 第62回 日本推理作家協会賞 短編部門
2009年 第62回 日本推理作家協会賞
短編部門受賞作
ねったいや
熱帯夜
野性時代6月号 掲載
受賞者:曽根圭介(そねけいすけ)
受賞の言葉
先日、とある商店街を歩いていたときのこと、見知らぬ美人に、突然声をかけられた。
「曽根さんじゃないですか?」
もしかしてファンか、とニンマリしたのも束の間、話してみれば、彼女は高校の後輩だった。二十四年ぶりの再会に、よく分かったなと感心すると、後輩曰く、「昔とまったく変わらず、先輩からは、ダメ人間臭が漂ってましたから」。
確かに高校時代、私は劣等生だった。卒業後も、大学は一単位も取れずに中退。就職はしたものの、三十代半ばで会社を辞めてからは、何をするでもなく、四年間もただ無為に過ごした。今では不遜にも作家を名乗ってはいるが、本を三冊書いたくらいでは、体に沁みついたダメ人間臭は抜けぬものらしい。
今回、期せずして賞をいただいた。しかしこれに慢心することなく、大にしては読者に喜んでもらうため、小にしては自らの脱臭のため、日々精進に勤めたい。
受賞の言葉
こどものころからミステリは大好きだったが、それは純粋に読者として好きだったわけで、ミステリ作家になれるともなろうとも思っていなかった。SF作家になるつもりだったのだ。しかし、当時SFは冬の時代の真っ只中で、どこを探してもSF関係の新人賞がなく、一種の方便として「落下する緑」というミステリ短編を書いてみたところ、運良く鮎川哲也さんの目にとまり、デビューできた。しかし、その後ミステリの仕事は一切来ず、ようやく書かせてもらえてもまったく売れず、やっぱりミステリ心がないことがジャンルのファンにはバレてるのかなあ、もともと部外者だからなあ、と疎外感を味わっていると、鮎川さんのお別れ会のあと、鎌倉の路上で「『落下する緑』の続きを連作形式で書いてみませんか」という依頼を受けた。一作目を書いてから十年以上たっていた。今回こうして、そのシリーズの一作で日本推理作家協会賞をいただけたことで、自分のなかで円環が閉じた、というか、ようやくミステリの書き手として認めてもらえたような気がする。拙作を選んでくださった選考委員のみなさんに心から感謝します。
- 作家略歴
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1962~
大阪市生れ。神戸大学卒。
一九九三年「背徳のレクイエム(凶の剣士)」で第二回集英社ファンタジーロマン大賞で佳作受賞、また鮎川哲也編「本格推理②」に「落下する緑」が採用された。以後、ホラー・伝奇・SFなど多岐のジャンルにわたる活躍を続け、「神の子はみな踊る」「水霊 ミズチ」といった作品がある。
2009年『渋い夢』にて第62回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
選考
以下の選評では、候補となった作品の趣向を明かしている場合があります。
ご了承おきの上、ご覧下さい。
選考経過
- 垣根涼介[ 会員名簿 ]選考経過を見る
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≪長編及び連作短編集部門≫ 北村 薫
最初に投稿を行った結果、『カラスの親指』『ジョーカー・ゲーム』の二作が同点で一位に並んだ。
それぞれの検討に入ると、まず『官能的』については、楽しく読んだ、リアルを越える方向でひとつの可能性を示したとする声もあったが、強く推されるまでに至らなかった。
『還るべき場所』は、よく調べて書かれ、力作感はあるが、反面、説明的となり山岳小説として必要な、描写による臨場感が薄くなっているのを惜しむ見方があった。
論議を尽くした結果、最初の投票で同点一位となった残りの二作に絞られ、まず『カラスの親指』が、細部に至るまで非常によく出来ている、精巧なプロットを評価したい、として受賞が決まった。
次いで『ジョーカー・ゲーム』が、トリックなどは斬新なものではなく、時代の描き方に気になる箇所もあるが、うまくまとめ一級の読み物としたプロの技を買おう、ということで、同時受賞と決まった。
≪短編部門・評論その他の部門≫ 垣根涼介
選考会はまず短編部門から始まり、五つの候補作について、各選考委員が○△×の三段階で評価・検討を行った。結果、最初に『前世の因縁』が、続いて『パラドックス実践』が候補から落ち、残る三作での再検討となった。この時点で、ライブシーンの独特の表現が評価された『渋い夢』の優位は動かず、受賞確定となる。残る二作での選考で、『身代金の奪い方』には小説としてのリアリティがやや欠けているとの評価があり、一方の『熱帯夜』は、プロの書き手としての手堅さが評価され、最終的に『渋い夢』と『熱帯夜』の二作受賞となった。
続いて評論その他部門の、四作の選考に移った。まず選考委員の総意として出たのは、四作ともまったく違うジャンルであり、完全な意味では比べようがない、という意見であった。それでも個別の評価としては、『「謎」の解像度 ウェブ時代の本格ミステリ』に選考委員すべてが○を付け、早い段階での受賞が決まった。しかし他の三作との差は各選考委員とも敢えてつけたものであり、しかも三作とも、評価的にはほぼ横並びであった。最終的に、もう一つの受賞に『<盗作>の文学史 市場・メディア・著作権』が決まったのは、内容への作者のバイアスのかかり方はさておき、『盗作』というデリケートな問題を扱ったその姿勢を評価するのなら、本賞以外にはなく、このまま埋もれさせてしまうのには惜しいという意見のもと、この部門も二作受賞となった。閉じる
選評
- 菅浩江[ 会員名簿 ]選考経過を見る
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まずは短篇部門からの選考でした。門井慶喜「パラドックス実践」は、先生の追い詰められかたが楽しいものの、肝心の論理に食い足りなさを感じます。ラストもあの程度のことで論破されるはずはないと思うのです。テーマが大きすぎたのではないでしようか。
沢村凛「前世の因縁」。もう少し丁寧に書くべきだったかと思います。発端の事件を「見た・後をつけた」も簡単すぎますし、すんなりと後悔して涙をこぼすラストも納得がいきませんでした。
「身代金の奪い方」の柄刀一は、何度も候補に挙がるベテランで、今回もリーダビリティが高い作品でした。しかし個人的に、一番得をするのは誰かが明瞭すぎるのと、ペットボトルの使い道もありきたりだったのが、「右往左往を楽しむ冒険話」の比重を大きくしてしまって残念でした。
反対に「渋い夢」の田中啓文は、これまでの活動が評価されての受賞となりました。トリックの難点も、彼にとっては水準作でしかないことも、選考会上で指摘はしましたが、独特の擬音や音楽への造詣の深さ、ライブの疾走感など、このクオリティを出し続けていることが大切に思えました。
私が一番に推した曽根圭介「熱帯夜」は、予想通り「巧い―まとまりすぎ」の議論になりました。時間をかけたことがよく判る作品の好感度は譲りがたく、また、山田さんの「雑誌に載っていたらお得に思える」という言葉もあって、晴れて受賞とあいなりました。
評論その他の部門は、落とす作品がない重要作ばかりで困り果てました。円堂都司昭『「謎」の解像度 ウェブ時代の本格ミステリ』は、唯一の同時代評論であり、文章力にも優れていて、頼もしく感じました。栗原裕一郎『〈盗作〉の文学史 市場・メディア・著作権』の労も大変なものだったと思います。ただ、その労を衒ったところがあるのはもったいない書き方ではないでしょうか。平井隆太郎『乱歩の軌跡』はダイジェスト風味ではなく、「貼雑年譜の完全廉価版」と「息子から見た回顧録」に独立させて、もっともっと読みたかった。本多正一編『幻影城の時代 完全版』もたいへん重要な資料であるものの、もう少し整理された形で残せなかっただろうか、と欲が出てしまう本でした。閉じる
- 野崎六助[ 会員名簿 ]選考経過を見る
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短編部門は順調に進んだ。
「前世の因縁」の作者は、前年につづいてのノミネートになる。だがレベル的にはダウン。選評もおおむね低調だった。「パラドックス実践」は、作品の狙いだけなら納得できた。詭弁論理学という興味深い研究領域がある。論理学に伍する面白さに小説で追ってもらいたい。
「熱帯夜」は、じつにうまくこしらえた短編だ。一読、感心したけれど、時間をおくと「うまく作られすぎ」ではないかとも思えてくる。この仕掛けを丹精する都合からキャラクターが規格品にとどめられているからだろう。しかしこれを大きな欠点とすれば短編ミステリの可能性はかなり狭められてしまう。今後の期待票もこめて。
「身代金の奪い方」は、この作者の持つ多くのシリーズのうち最もライト・テイストで最も大量に書かれているものの一作。長いシリーズで疲れもみせず、新機軸に挑んでいるところも評価できる。わたしとしては二番目に推したが、一作の単体として弱いという点は、そのとおりで、他の賛同を得ることはできなかった。
「渋い夢」は、一にジャズ・ライヴ小説の臨場感、プラス、非日常の謎を非日常的に解決する、という特質で高得点を得た。トリックについては、実現不可能かどうかより、ある高名な作品の「応用」である点が言及された。大きな傷とはならないという評価だ。
さて評論その他の部門である。例年になく「その他」が突出している。純然たるミステリ評論は一冊、順当ならこれで決まる。だが「その他の部門」三冊があまりに強力すぎて……。二冊は、ここであえて強調するまでもない、貴重な資料。もう一冊は、成り立ちからして不遇であるしかないことを決定された「下品な」ドキュメント(とりあえずは、文学史の体裁をとっているが)。
困った。わたしとしては、最初は、四作同等の○ジルシ、判定不可能の反則技で臨んだ。激論の末に場外乱闘も辞さず、といった展開ならむしろ話は簡単だったろう。いっそのこと、四作同時受賞の特例を、推協六十周年のポストイベントとして強行採決(何のこっちゃ)してしまおうか、なんて……。口に出したらジョークに抜けるどころか、リアルになりかねないような不穏な空気。
いちおうわたしの順列は、『幻影城の時代』の資料としての価値は第一。『乱歩の軌跡』は、大乱歩の貼雑帖への注釈にとどまらず、作家以前の乱歩像をまったく独自に構築した評伝研究として次点、というものだ。だが、この二作を高位とすれば、必然的に他の二作は落ちる。困った。――進退きわまったら、書物の価格の高い順に並べた、とでも弁明するしかないか、などと。
結果は逆になった。『〈盗作〉の文学史』は、誰もが覗きたがるけれど正面からの研究となると誰もが尻ごみする盗作という領域に立ち向かった。その点への評価だ。不充分な点もかなり指摘されたが、完璧さを要求するのも酷なことだ。わたしは、新刊の時点で読んで記憶にとどめていたが、まさか候補作となって選考する立場に置かれるとは予想もしなかった。
『謎の解像度』は、ウェブ時代の本格ミステリという総論で非常に優れている。ただ個別の作家・作品をあつかった各論になると、解像度にかなりのバラツキがある。評論以前の解説や、内輪向けの話がけっこう多くて、そちらに目が向くとがっかりした。閉じる
- 馳星周[ 会員名簿 ]選考経過を見る
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受賞作が一作なら『渋い夢』、二作受賞があるなら『熱帯夜』を推そうと腹を決め、選考会に臨んだ。『渋い夢』はミステリとしては重大な欠陥を孕んでいる。メイントリックに実現性があるかと問われると首を傾げざるをえないのだ。
しかし、そんなことはわたしにはどうでもよかった。作中で描写されるジャズライブの臨場感にわたしはすっかり夢中になってしまった。
疾走感極まる描写に、時折挿入される擬音の独創性。まるで読む物がライブ会場にいるかのような錯覚をもたらす魔術。
不勉強な身ではあるが、あのジャズの協奏をこれほどまで見事に文章で表現しきった例をわたしは他に知らない。
トリックに無理があろうがなんであろうが、わずか数ページのジャズライブの描写のために、わたしはこの作品を一押しにすることに決めた。
また『熱帯夜』は生ぬるい世界観にたった小説がちやほやされる昨今、作者の底意地の悪い視点が光っていた。文章も端正で叙述による仕掛けも見事。作品の完成度も候補作中随一だった。『渋い夢』のジャズ描写がなければ、間違いなくわたしはこの作品を一押ししたはずだ。
他の選考委員もわたしとほぼ評価は似通っており、それほど議論が白熱することもなく二作受賞に決まった。当然だと思う。
惜しかったのは柄刀氏の作品で、作品としての完成度は高いけれど、これは氏の直球の作品ではないということで受賞は見送られることになった。すでにその才溢れることは周知の事実なので次作に期待したい。
短編賞の選考はすんなり終わったが、揉めたのは評論その他の部門だ。候補作すべてが水準をクリアした力作であり、なおかつ、ジャンルがばらばらである。どこに論点を置いて選考すればいいのか。全選考委員がその点に頭を悩ませた。四作受賞ではいけないのかという意見が出たことを記しておく。それほど難しい選考となったのだ。
泣く泣く二作品に絞り込み、しかしそれ以上は絞り込めずに二作受賞ということに相成った。
『「謎」の解像度』は候補作中唯一の純粋な評論として推された。ただし、従来の本格ミステリ論の枠内にとどまっており、若い評論家としてその殻を打ち破るような大胆な論旨が欲しいという意見もあった。
『盗作の文学史』は労作ではあるが、現存している当事者にインタビューひとつ試みていないという指摘が多かった。しかし、取り上げられている内容を鑑み、推理作家協会がスポットライトを当てなければ黙殺されてしまうのではないか、それではこの労作が惜しすぎるという声が多かった。
他の候補作も、作品として劣っていたわけではない。苦渋の選択だったことをご理解いただきたい。閉じる
- 福井晴敏[ 会員名簿 ]選考経過を見る
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いや、今回は参りました。短編部門に評論その他の部門と、どちらも筆者には著しく無縁なジャンル。持ち回りの当番制とはいえ、オレが選考しちゃっていいのかねぇ? というのが偽らざる心境でありまして、そもそも善し悪しの判定基準がわからない。で、悩んだ結果、短編部門に関しては評価軸を作家の見地からずらして、「どの作品がいちばん売り込みやすいか?」というプロデューサー的見地から判断させてもらうことにしました。
結果、実は『パラドックス実践』が筆者的には一等でありました。著者の門井氏の御作は、昨年の長編部門選考の際に『人形の部屋』を読ませていただいていたのですが、『人形~』ではいささか鼻についた衒学趣味が、本作では特殊な教育方針を掲げる高校という舞台を得て、嫌味なく作品内に定着している。独特のダイアローグも生き生きしていて、読後感もさわやか。この設定なら著者の持ち味を存分に活かして、シリーズを継続することもできるでしょう。数を重ねて一風変わった学園物シリーズに仕立てられれば、ティーン向けの良本になると確信します。
ティーン読者はラノベにごっそり持っていかれてる昨今ですが、「ラノベはオタク臭くて嫌、でもなに読んだらいいのかわからない」って子もいっぱいいるのです。そういう子たちに売り込める可能性がある、という一点において、筆者は選考会の逆風をものともせず本作を推挙。受賞は逃しましたが、担当編集は大事にシリーズを育ててください。平成に入って以降、ポスト宗田理の席は空いたままなのですから。
ちなみに次点は『身代金の奪い方』でありまして……受賞結果が物語る通り、プロデューサー的見地による評価軸は選考会とは相入れぬと判明した次第。来年はどうしたらいいものか、いまから悩んでしまいます。
悩むと言えば、評論その他の部門。このうち評論は一冊、他の三冊はすべてジャンル違いのその他で、なにをどう選べってんだ!? というのが全選考委員共通の悩みとなりました。最終的に選ばれた二冊は、「知らない人にも読ませてしまう」パワフルな評論と、前人未到の資料収集に挑んだ大労作。前者『「謎」の解像度 ウェブ時代の本格ミステリ」は、バブル期から現在に至る文化史としても読めるところがすばらしい。後者『〈盗作〉の文学史 市場・メディア・著作権』は、マスコミがこの種の問題を取り上げる際、唯一無二の一次資料本として後世の役に立つことでしょう。
あとの二作も、本の作り自体がお洒落で、いいなと思ったのですけどね。編集・企画賞ってのが別立てであればよかったのですが。閉じる
- 山田正紀[ 会員名簿 ]選考経過を見る
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〔短編部門〕
「渋い夢」と「熱帯夜」の同時受賞を念頭において選考会にのぞんだ。結果として、そのとおりになって満足している。
「渋い夢」はなにしろ主人公がテナーをソロでブロウする描写が圧倒的に素晴らしい。「延々と怪鳥が叫んでいるようなフリークトーンの嵐」という描写を読めば、吹きあげるテナーの疾走感がありありと感じられるようではないか。作中トリックが現実には実行不可能であることを指摘する発言もあったが、ミステリーには「現実には実行不可能ではあるが魅力的な謎」の系譜が脈々とあって。この作品はそれにつらなるものだろう。
「熱帯夜」は作者の小説作りのうまさと底意地の悪さがキラリと光る秀作だった。雑誌を読んでいて、こうした短編に出くわせば、大いに得をした気になるはずだ。それだけでも十分に受賞に値する。
柄刀一氏の『身代金の奪い方』について一言お断りしておきたい。この作品は秀作だが、どちらかというとシリーズのうちのバラエティとして数えられるべき作品で、そのために積極的に推すことができなかった。しかし、以前、やはり氏の短編集がノミネートされたとき、そのうちの一作がきわだって素晴らしかったために、「作品の出来にばらつきがある」という理由から受賞を逸したことがあった。そのときの経過を今回の事情をあわせ考えると、いかにも不運としか言いようがない。そのことについて選考委員から「申し訳ない」という発言があったのを記しておきたい。
〔評論その他の部門〕
円堂都司昭氏の「『謎』の解像度」については、私の作品についても論じられているために、公正をはかるために、「棄権」という形をとらせていただいた。この評論集に対する私の発言は、すべて受賞が決まったあとになされたもので、ここに記されるべきではないだろう。ただ選考基準は、○、△、×、の三段階評価でなされたのだが、最初、「棄権 一、〇、四」という採点であったことをご報告しておきたい。
栗原裕一郎氏の「〈盗作〉の文学史」は労作である。資料をコピーするだけでも膨大な労苦と時間を要したはずであり、微妙なテーマであるだけに、まずは報われることが少ない、ということを考えると、その情熱に敬意を表さざるをえない。「盗作」が微妙なテーマだというのは、オリジナリティと模倣というのは創作の両輪であって、後者を一方的に「悪」と決めつけるのは、あまりに短絡的すぎるからである。栗原氏にしても、盗作を一方的に悪と決めつけているわけではなく、そのことに好感を持たされた。
「〈盗作〉の文学史」の受賞が決まったあとに、「この作品が協会賞を受賞すると推理作家協会がその内容をすべて認めたという誤解を与えるのではないか」という発言が外部からもたらされた。ご心配はわかるが、受賞がすなわちその作の内容を全面的に支持する、という意志表示なのだとしたら、そもそも「評論賞」などという賞は成りたたないだろう。もちろん、「〈盗作〉の文学史」を受賞作に選んだからといって、その内容を選考員が全面的に支持したことを意味しているわけではない。閉じる