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1951年 第4回 日本推理作家協会賞 短編部門

1951年 第4回 日本推理作家協会賞
短編部門受賞作

しゃかいぶきしゃ

社会部記者(「午前零時の出獄」を改題)

受賞者:島田一男(しまだかずお)

受賞の言葉

   ブン屋ものについて

 クラブ賞を決定する幹事会の席上、“社会部記者”が短篇賞候補としてとり上げられた際、私は次ぎのような意味のことを述べた。
 ―“社会部記者”は筆者である私自身、探偵小説としてクラブ賞に値する程のものとは考えていない。これは、探偵小説的な興味とは別のものを狙って書いたものである。もしこの程度のものしかクラブ賞の候補がないなら、本年は短篇賞ナシでよくわないか・・・。
 しかし結局、幹事会の決定で、“社会部記者その他”として、授賞が決定された。
 現在私としては、―もっと自信のある作品で賞を獲得したかった―というのが偽りのない気持である。
“社会部記者”は私の謂所ブン屋物に属する作品である。このブン屋物に対しては、各方面から色々と御批判頂いているが、私は、今後もこの種のものを書き続けたいと考えている。この機会に、私が新聞記者物を書き始めた動機について述べておきたい。―宝石誌へ入選したことによって、探偵作家の末席に加えていただいたが、同期の香山、山田、高木氏等が各々の特色を生かして華々しく活躍していられるのに反し、私は平々凡々たる作品を書き続けていた。長年の新聞社生活から私にシミ込んでいる記者的な物の見方、考え方が、作家としての人間探究にブレーキをかけていたのである。
 私はなんとかこの囲みを破突しようと努力したが、未だに抜け出すことが出来ないでいる。新聞記者物は、このあがきの一つの現れなのである。
 ―抜け切れないなら、逆にそのものズバリで行ってやれ・・・それがブン屋物となって北崎社会部長を生み出した。これをハードボイルドの移入という人があるが、それは当らない。社会部自体がハードボイルドなのである。最後に、この次ぎにこそ、自信のある作品をひっさげて、賞をとろうと野望している。

作家略歴
1907~1996
京都市生れ。明治大学卒。
一九四七年、「宝石」の第一回懸賞に入選した「殺人演出」を発表。五一年、「社会部記者」ほかで探偵作家クラブ賞を受賞。一連の東京日報物のほか、庄司部長刑事のシリーズなど人情味あふれるキャラクターを活躍させた。五八年から六六年までのNHKドラマ「事件記者」の脚本を単独執筆した。「上を見るな」ほか多数の推理小説があり、時代小説や少年少女向き小説も多い。探偵作家クラブ時代に幹事長を務め、七一年より一期二年、日本推理作家協会理事長。

選考

以下の選評では、候補となった作品の趣向を明かしている場合があります。
ご了承おきの上、ご覧下さい。

選考経過

選考経過を見る
四月十二日在京幹事会が召集され、新宿のレストラン雅叙園に於て午後二時から五時迄種々の議案が評議された。出席者は江戸川会長、大下副会長、木々、渡辺両会計監事、水谷幹事長、城、香山、島田、永瀬、大坪、山田、延原各幹事十二名。
 まづ、会計報告と本年度予算の研究、年鑑五一年度版を岩谷書店より継続出版すること、新幹事推薦の検討、並びに来月より本会報編集担当者として島田一男氏を、土曜会司会担当として永瀬三吾氏を委嘱することに決定し、最後に二十五年度クラブ賞決定の討議に入った。
 クラブ賞の詮衡については、既に報告された通り準備委員六氏によって選出された作品が在京幹事全員に廻覧され終ったのが四月十日であった。一方、クラブ全員に対し三月十五日〆切で約一七〇通の投票ハガキを配布、投票は七〇通であった。投票内訳は左の通りである。(長篇一、短篇一を選出)
【長篇】
「石の下の記録」(大下宇陀児) 二十八票
「薫大将と匂の宮」(岡田鯱彦)  十三票
「ペトロフ事件」(中川 透)   十一票
「びろうどの眼」(小島政二郎)   一票
 白票              十五票
【短篇】
「社会部記者」(島田一男)十一票 「天国荘綺談」(山田風太郎)十票 「断崖」(江戸川乱歩)九票 「影なき女」(高木彬光)四票 「モンゴル怪猫傳」(渡辺啓助)四票 「検事調書」(大坪砂男)三票 「死と恋と波と」(井上靖)三票 「少女の臀に礼する男」(木々高太郎)三票 「人間競馬」(船山馨)二票 「風船魔」(島田一男)二票 「翡翠湖の悲劇」(赤沼三郎)二票。
 以下各一票「かむなぎうた」(日影丈吉)「チャタレー部落」(武田武彦)「下山総裁」(山田風太郎)「さそり座事件」(水谷準)「戦後派殺人事件」(高木彬光)「犠牲者」(飛鳥高)――白票十二票
 以上の資料を参考として各幹事の意見が開陳され、改めて投票に移り、長篇は「石の下」九票、「薫大将」二票、「ペトロフ」なしの結果となり、異議なく大下宇陀児氏へ授賞が決定した。
 短篇賞は作品の価値判断に個人的な段階があって、毎年議論百出の盛観を呈するのであるが、今回も種々の見解が各幹事より提出され、結局投票の結果は「社会部記者」六票、「断崖」三票、「かむなぎうた」一票、白票二といふ結果となり、授賞は島田一男氏に決定した。但し島田氏は授賞作品の他にも力作が相当あるので、発表は「社会部記者」その他と附加へることを申合せた。功労賞的な意味も含めたものである。
 第一回以後中絶の形の新人賞は中止したわけではないが本年度も授賞なく、また探偵映画賞も本年は一応見送ることに決定した。会員諸氏の御協力、ことに準備委員六氏の労に対し本欄より厚く感謝いたす次第。
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選考委員

予選委員

候補作

[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『天国荘綺談』 山田風太郎 (『天国荘奇譚』として刊行)
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『下山総裁』 山田風太郎
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『風船魔』 島田一男
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『モンゴル怪猫傳』 渡辺啓助 (『モンゴル怪猫伝』として刊行)
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『断崖』 江戸川乱歩
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『影なき女』 高木彬光
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『人間競馬』 船山馨
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『死と恋と波と』 井上靖
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『犠牲者』 飛鳥高
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『花売娘』 大坪砂男
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『悲劇の触手』 水谷準
[ 候補 ]第4回 日本推理作家協会賞 短編部門  
『お艶殺し』 大岡昇平